SS【アミューズメントパークの覇者 前編】

兄さんディにぎりっぎり。

某所での話題がネタになったSSです。とりあえずアップします。コメントのお返事等入れるつもりだったのですが書きかけで断念・・・後ほどに。ちょっと大急ぎなので、誤字脱字へんなところお目こぼし下さい。あとで直しに来ます。

アミューズメントパークの覇者



 なぜこんなことになっているんだろう。
 個室を占領したまま、俺は先ほどから何度も自問を繰り返していた。
「おい森永、大丈夫か?」
 ドアが軽くノックされる。声はかなり呆れているようだ。
「や、あんまり……気にせず乗ってきて下さい」
 声を絞り出すようにすると、とりあえず外にいるから、と声は遠のいた。
 なぜこんなことになっているんだろう。そうだ、水着。はじめは水着が見たかっただけだったのに……


「おい森永。今週の日曜、長スパに行くぞ」
「マジですか」
 先輩がそう言い出したのは、ある夏の日のことだった。長スパというのは正式名称長鳥スパーランド、隣県にある西日本最大級のレジャー施設だ。遊園地に温泉、アウトレットモールもあるが、この時期ならなんと言ってもメガ海水プールが目玉である。
「かなこが連れてけってうるさいんだよ」
「そうですか、そうですよね」
 しかしかなこちゃんは俺の味方だから、きっとナイスアシストをしてくれるに違いない。

 先輩の水着姿を見るのは初めてだ。どんな水着だろう。際どいものを着るわけはないだろうから、一番布が少ないとしてもショートパンツタイプ……いやいや先輩の細く引き締まった太腿が白日の下に晒されてしまう。ここはやはり無難にハーフパンツタイプ……軽く膝にかかるくらいのやつがいいだろう。しゃがむと膝がちらっと見えるんだ。ゆったりしたものなら裾から手を入れることもできるわけだから
「残念、下着つけてるんですね」
「こら、水の中で見えにくいからってイタズラすんなよっ」
 なんてのもありなわけで、更には
「プールでも日射しきついな」
「先輩ちゃんと日焼け止め塗らなきゃ、色が白いんだから。俺やりましょうか?」
「ん、頼む」
「じゃあ背中から。ほら、うつ伏せになって……ふふ、ちょっと汗ばんでますね」
「黙ってやれよっ」
「じゃあ次、こっち向いて下さい」
「前は自分でやるって」
「いいから任せて……ムラなく塗ってあげますから。ほら……ここも……」
「ちょ…っと待てって……あっ……」
 なんてのもありなわけで!!

「いいですね!プールいいですね!!」
「あ?」
 鼻息荒く拳を握った俺を、先輩は胡乱な目で見た。
「プールじゃねぇよ、遊園地のほう。スチールなんとかっていうジェットコースターに乗りたいんだとよ」
「…………遊園地ですか」
 先輩は、俺の露骨にがっかりした様子を勘違いしたようだった。
「おまえああいうのダメか?無理にとは言わんが」
「いえ、大丈夫です。そういうことじゃないんで……せめてどんな水着か教えてくれませんか?」
 うっかり聞いてから失敗したと思った。先輩はあからさまにドン引いた。
「……いや、持っとらんが」
 それでも真面目に答えてくれたので、懸命にフォローする。
「そうですか〜そう言えば俺も何年も泳ぎに行ってないなぁ。高校のときも水泳の授業ってありました?」
「あったな。授業以外で泳ぎに行ったことがない」
「あ、じゃあスクール水着が最後……」
 それはそれで妄想が膨らむ。しかし先輩がまだ若干引いたままなので、ぶるぶると頭から水着妄想をふるい落とす。
「かなこちゃんは俺が行ってもいいんですか?」
「ああ、むしろ来てくれって。その…俺がちょっとダメなんだよな、ジェットコースターとか。だからおまえが平気なら来てもらったほうが助かる」
 先輩は不本意だ、というように軽くふくれっ面をした。何それかわいいんですけど。

「大丈夫、これそんなにスピードでないやつですし」
「でも……落ちる、だろ」
「怖かったら俺に掴まっていればいいですよ」
「っ別に怖くなんか……!」
 ガタン!
「あっ!」
「大丈夫、俺に掴まって……」
 そんでもって夕方になったら観覧車に乗って
「今日はありがとな」
「いえ、俺もとても楽しかったです」
「おまえって頼りがいがあるな」
「そんな、照れます」
「いや、ほんとに……格好良かったよ」
「先輩……」
「森永……」
「先輩!そっち行っていいですか」
「え、ダメだ揺れるだろ!」
「ゆっくり動きますから大丈夫……ほら」
「なんだよ」
「もうすぐ頂上ですね。……キスしていいですか」
「だからいちいち聞くなって……ん」
「ほら、陽が沈みますよ……」
 なんちゃってなんちゃって!!

「遊園地ばんざい!……あれ?」
 思わず両手を上げたとき、先輩の姿はすでにリビングにはなかった。




「わーい遊園地!」
「あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
 幸い天気は薄曇りで、日差しがきつすぎることもなく過ごしやすかった。かなこちゃんはおおはしゃぎで園内マップを広げている。
「じゃあね、じゃあまずスチールサラマンダー!」
「いきなりそんな大物かよ」
「はやく行ったほうが混まないし、他のに乗ってスピードに慣れちゃったら楽しめないでしょ!」
 先輩は首をすくめて俺を見た。俺は余裕で笑って頷く。列の最後尾まで来ると先輩は近くのベンチに向かおうとしたが、かなこちゃんは先輩を逃がす気はないようだった。
「だめだよう、せっかく来たのに!兄さんも一緒に乗ってよ!」
「森永と一緒に乗れよ。俺は一服してるから」
「これだけでも乗ろうよう〜!」
 かなこちゃん強し。結局先輩はスチールサラマンダーの他は乗りたいものしか乗らない、と交換条件を出して列に並んだ。

 50分ほど待って順番が回ってきた。先輩はかなこちゃんと一緒に乗り込む。3人だからこの場合致し方ない。まだひとつ目だ、焦ることはない。がっかりした顔を見せないように気をつけながらセーフティバーを下ろし、発進を待つ。先輩は指が白むほどバーを握り締めていて、少し心配になった。
 ガタン、とひと揺れしてコースターが走り出す。最初はわりとゆっくりだ。レールの山へと向かっていく途中で、俺は自分の動悸が早くなるのに気付いた。手が震え、喉が渇く。背筋にぞわぞわと緊張が立ち上っていく。コースターが頂点に達し、地上へと滑り落ちる一瞬前、俺は唐突に悟った。
 あ、オレこれ、駄目だ。
「ぎぃやああぁああ〜〜〜〜!!!」
 曇り空に絶叫が響いた。それは俺の今までの人生で最大級だったに違いない。


「なんだ、大口叩いておいて」
「すみません……」
 最寄りのフードコートまで、ほとんど引きずるように連れてこられた俺は完全にグロッキー。めまいがするし、身体が震えてテーブルに突っ伏しているのがやっとだった。
「先輩は大丈夫なんですね……」
「ん?ああ。よく考えたら最後に乗ったのが中学生だったからな。10年も経てば平気になるもんだな」
「俺は逆に駄目になったみたいです……」
 そういえば、俺も中学生以来乗ったことがなかった。
「森永さん、大丈夫?無理しないでね」
「うん……ごめんね……」
 これはダサい。ものすごくカッコ悪い。はやく回復して名誉を挽回しなくては……
「俺ここで休憩してるんで、ふたりで行ってきて下さいよ。少し休んだら合流します」
 ふたりは顔を見合わせて頷いた。待ってても俺が気にするだけだと分かっているんだろう。メールで連絡を取り合う確認をし、アトラクションに向かう兄妹に手を振る。さて、まずはめまいが治まらないことには。俺は冷たいウーロン茶をひとくち口に含み、再びテーブルに平たく伸びた。



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