SS【テミスの憂鬱】

 一周年にお祝いコメント、ありがとうございます!初めてのコメントを下さったかたもいらして、感謝感激です(人´v`)*゚

 嬉しいことは重なるもので、この記事で妄想カテゴリもちょうど100となりました(連番も含んでですが)。記念というほどでもないですが、このSSは私がずっとできれば本編で見たいと思っていた内容です。待ちきれずに妄想を晒すことになりましたが・・・(本当は17日に合わせようと思ってたけど寝ちまいましたorz)。

 そしてこの記事のあと、しばらく4月になるまで少なくともSSでの更新ができないかと思います。年度末ってなんでこう忙しいんでしょうね?4月になったら時間に余裕ができるので、それまでは少しづつでも書き溜めておけるようにしたいなと思っています。

 また、キリ番の申告がありました(^ ^)。今回も2名の方から申告をいただきました♪今回タイミングが被って紛らわしくて申し訳なかったですが、一周年記念リクもたくさん頂いております。皆さまご協力ありがとうございました(○´∀`)ノ゙


【キリ番〜】〜【一周年〜】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪鍵コメのほうはリクエストメインになるので今回は割愛させていただきますが、たくさんいただいてありがとうございます!どうやってまとめようか今から色々考えています〜頑張りますね♪




テミスの憂鬱


 宗仁が急に帰国すると言い出したのは、つい十日ほど前のことだった。しかし休暇というわけでもなく、数日の滞在でとんぼ返りだと言う。突然の話に宗一は呆れて電波越しに父親をなじり、それでも何本も電話をかけて家族が顔を合わせられるように計らった。幸い帰国日が土曜なのでかなこの外泊許可は取れたが、さすがに巴は都合をつけられず、巽家が勢揃いすることは叶わなかった。その代わりなのかなんなのか、宗仁から是非にと要望があり、森永は毎度お馴染みの松田家に招かれ、宗一とともに居間に溢れかえる書類と写真と衣類とよくわからない標本類を眺めていた。

「助手の子が荷物上手に詰めてくれたんだけどね、出したら入らなくなっちゃってさあ」
 居間は宗仁が広げた荷物で足の踏み場もない。探し物を始めたらこうなってしまったのだと宗仁は悪びれる様子もないが、こんなに散らかされても嫌な顔ひとつしない松田は本当に人間が出来ていると、森永などは思う。
「みんな、客間にお茶を用意するから移動してね。そろそろ緋野さんがいらっしゃる頃よ」
「あ、そういえば。僕ちょっと着替えます」
 あたふたとごった返したなかから圧縮した衣装袋を取り出し、宗仁は居間を出て行った。旅の埃が舞い散っていそうな居間で茶を飲む気は確かにしない。宗一と森永も、松田に促されるまま客間に移動したが、宗仁を訪ねてくる客ならば二人は遠慮するのが普通だと思う。

「先輩も知っている人なんですか?」
「いや、知らん名前だ」
 宗一の”知らん名前”が当てにならないことを重々承知している森永は落ち着かなく本人を待ったが、戻ってきた宗仁は驚くべきことにスーツを着ていた。髭を当たり、顔も洗ったのかこざっぱりしている。
「宗仁さん、お客さんがいらっしゃるなら俺二階に行ってますけど」
 正装で迎えるような客なら、ますますもって森永の同席は不審だろう。なんせ息子の後輩、という立場でしかない。
「緋野さん、森永くんにも会いたいって言ってたよ?宗くんは知り合いなんだよね」
「俺は知らんぞ」
「心当たりがないんですが……どういった方ですか?」
 ますます首を捻った時、玄関のほうからチャイムの音がした。すぐに松田の応じる声が聞こえる。玄関の扉を開ける重い音と同時に、ハキハキとした女性の声が挨拶をした。このまま居ていいものか悩むうちに、声は客間に近づいて来る。
「そっか、苗字が違うからわからないのか。ほら貢くんのお母さん、麗子さんだよ」
「お邪魔します」
 松田に案内されて入ってきたのは仕立てのいいスーツを着た中年の女性だった。宗仁が素早く立ち上がって迎える。
「あ、あんたはーーーーーっ!!」
 叫んだ宗一は女を指差し固まった。恐怖におののき顔面蒼白_____とは言い過ぎかもしれないが、少なくとも度肝を抜かれているようではあった。森永とて忘れてはいない。黒川の母と言えば、”この”宗一が一本取られたという恐るべき女性なのだ。

「宗一くんも、お久しぶりね」
 ふっふっふ、と低音で笑う麗子と気を持ち直した宗一はしばし睨み合った。急に緊迫した雰囲気に、宗仁が不思議そうに二人の顔を見比べる。森永はひたすら縮こまるばかりである。
「あの、息子がなにか?」
「いーええ、とんでもない!」
 コロッと態度を変えた麗子は、愛想良く笑って座布団の手前で膝をついた。正座をすると丁寧に手をついて礼をとる。
「巽さん、不肖の息子が勝手なことを致しまして……親にも相談がなく、ご挨拶が遅れまして大変申し訳ありません。巴さんのこと、お許し下さってありがとうございます」
「いやそんな、とんでもない!僕もなかなか日本に戻って来れなくて……」
 堅苦しいのは苦手、と顔に書いてあるような宗仁とは対照的に、麗子はかなりきちんとしたタイプのようだった。身なりもバリバリのキャリアウーマンといった体である。これで宗一よりもうわてと聞くだに、黒川の性格はきっと父親似なのだろうと森永は思った。

 一通り挨拶と世間話が交わされる間、宗一は警戒するように麗子を窺って口をきかなかった。茶を出す松田ともすでに電話でやり取りがあるらしく、和やかに談笑する様子に恐ろしげなところはない。
「こちらが森永くん。宗一のルームメイトです」
「あっ……初めまして」
 突然紹介され、森永は慌ててぺこりと頭を下げた。そう言えばなぜ麗子が森永に会いたいと言ったのか定かではない。おそらく黒川から話を聞いているのだろうが、一体どこまで聞いているのか。不安が募る森永を、麗子はまじまじと見た。
「どうぞよろしく。あなたが噂のね〜……へえぇ」
「ど、どんな噂なんでしょ」
「俺が知るかっ」
 小声で肘を突っつき合う宗一と森永に、麗子は小首を傾げた。
「宗一くんはしばらく会わないうちになんか雰囲気変わったわね」
「あ?なんだそりゃ、知らねーよ」
「こら宗くん、失礼だよ」
 たしなめる宗仁を無視し、宗一はそっぽを向いた。傍若無人なようで、宗一は誰彼構わず無礼な態度を取るわけではない。特に目上の人間に対しては(相手にもよるが)礼儀正しく接するほうなので、宗仁もその態度に驚いているようだった。
「いいんですのよ、私と宗一さんはもう数年来の友人で気心も知れてますし」
 上品に口元に手をやった麗子は同意を求めるように宗一を見たが、その視線は閃光のように睨みをきかせていったので、森永は完全に腰が引けた。宗一はといえば唸り声でも上げそうな顔つきである。まさに竜虎相搏つ。先輩が虎かなぁちょっと猫っぽいもんなぁなどと無駄なことを考えたのは、単なる現実逃避だ。

 二人の険悪なムードに気付きもしない宗仁は純粋に新しい家族に興味を持っているようで、黒川の子どもの頃の様子を聞いたり楽しげだ。
「貢くんが結婚に反対されていなくて良かった。家族から反対されるのも悲しいもんですからねぇ」
「あらでも宗一さんは反対だって伺ってますけど?」
 麗子は嫌味に聞こえない程度の声音で攻撃をした。やはり年の功か宗一より格段に小技が効いている。
「これは弟が取られるみたいで寂しいだけなんですよ。宗くんもトモくんの幸せが一番だもんね」
「てきとーなこと言ってんじゃねぇよっ」
 宗仁に噛み付く宗一の横顔は、やや威勢が弱いようだった。森永は取りなそうと口を開きかけて、結局やめた。自分に何が言えるというのだろう。
 宗一がそばにいろと言ってくれてから、森永が宗仁に会うのは今回が初めてとなる。宗一は自分とのことを家族に言うつもりがあるのだろうか。黒川のように挨拶をする覚悟というなら、もうとっくに出来ている。宗仁はきっと、戸惑ったとしても最終的には受け入れてくれるだろう。つまりは宗一の気持ちだけなのだ。自分との関係を恥じて欲しくはない、だがそれが難しいことはわかっている。

 客間のドアを叩いた控えめなノックが森永の思考を破った。松田が顔を出して、申し訳なさそうな顔で宗仁に声を掛ける。
「お話中ごめんなさいね。宗仁さん、大学からお電話よ。急ぎらしいの」
「わかりました。緋野さん、ちょっと失礼しますね」
 会釈して宗仁が席を立つと、麗子の顔からさっと笑みが剥がれ落ちた。軟化しない宗一の態度に歩み寄る気持ちは失せたらしい_____元からあったかは不明だが。
「お父さまが認めているんだし、あなたももう観念したら」
「関係ないね。どうせうまくいかんに決まっとる」
「強情っぱり」
「押し売りはお断りだ」
「…………」
「…………」
 目を合わせない二人の間に沈黙が流れる。森永は重い空気に耐えきれず、口を開いた。
「あ、あの〜。今日は旦那さんはご一緒じゃないんですか?」
 森永の存在を思い出したように顔を上げた麗子は、再び明るく笑んだ。森永にはこの変わり身の早さが恐ろしい。
「いま出張中でね〜。でも今日を逃すとまたなかなか巽さんとお会いできないから」
「そうですね。すぐ海外行っちゃいますもんね」
「妹さんともお会いしたいと思っていたけど、ちょっと無理かもしれないわね」
「かなこちゃんは部活があるから帰るのが夕方になっちゃうので……」

 麗子は二人の様子にどことなく違和感を感じて、森永と会話をしながらもそのことについて考えていた。
 目の前の青年は宗一の後輩兼同居人だ。息子から宗一を慕っているゲイだという話を聞き、どんな物好きだろうと興味を持っていた。だから松田からも度々遊びに来ていると聞き、都合がつけば会ってみたいという話をしたのは自分だ。しかしこのような場_____結婚した二人の親同士の初顔合わせ_____に同席するとまでは正直思っていなかった。宗仁はずいぶんとおおらかな性格のようだから気にしていないだけかもしれないが、彼ら自身もその点について疑念を持っている様子はない。それどころか宗一は完全に知らん顔で時々茶をすすっているだけ、場をもたせることすら押し付けられた格好の森永はそんな宗一をフォローしようと必死だ。その光景と、宗一を久しぶりに見たときの印象、これらが麗子の脳内であるひとつの結論を出した。

「はぁ〜ん……あんたらデキてんのね?」
 麗子はかなりの確信を持って言いはしたが、例えカマをかけただけだったとしても、二人の反応はこれ以上ないくらい明確な答えになった。すなわち宗一は茶托に置こうとしていた湯呑みをひっくり返し、森永は口を両手で覆って宗一と麗子をせわしく見比べる。二人とも顔を真っ赤にして動揺があらわだ。
「なんだか色っぽくなっちゃったと思ったら、そういうことだったとはね……」
「色……っ?イキナリ何言ってんだあんた、頭おかしいんじゃないか?!」
 座卓に両手を叩きつける宗一を斜めに見やり、麗子はわざとらしくため息をついて両手を広げ、首を左右に振った。
「私もすっかり慣れちゃったわねぇ〜、宗一くんがまさかとは思ったけど」
「違いますよ!」
 しかし二の句が継げず、肩を震わせた宗一にかぶせるように大声を出したのは森永のほうだった。
「俺は確かにゲイですけど、先輩は違います。先輩がそんな、あるわけないじゃないですか」
 急に勢い込んだ森永に、麗子は手を広げたまま目を見張った。宗一も驚いたように黙ってしまう。
「一緒に住んではいるけど、本当にただのルームシェアで、部屋に鍵だってついてるし。だから……」
 森永は二人の視線を遮るかのように、顔の前に手のひらを掲げた。口元に笑みを張り付かせたまま俯き、声はだんだん小さくなっていく。
「だから……ぐっ!」
 言葉を探して口籠った森永を、宗一が突然張り飛ばした。唇を引き結び、眉間の皺は深い。麗子に向かい、真っ赤な顔で拳を握り締める。
「ああそうだよ!何か悪いのか!!あんたにゃ関係ねーだろ!!」
「せん……」
 森永は頬に手を当て、畳に転がったまま宗一を仰ぎ見た。自分の耳が信じられない。いま、宗一は認めてくれたのだろうか。自分との仲を、しかも話に聞く限り最も認めたくないだろう相手に。
「……別に悪かぁないわよ」
 麗子は手を下ろして彼らを見た。貢はさすがにそれはないようだと言っていたが、この親密な空気が全てを物語る。そう、二人は幸せなのだろう。宗一が簡単に意見を翻すタイプだとは思えないが、固定観念や常識や自分を構成していると信じていた何もかも、それらを打ち破るほどの情熱に覚えがないわけではなかった。
「でも宗一くん、アナタ自分が私や貢に言ったことはちゃんと憶えているんでしょうね。私は憶えているわよ」
_____男と恋愛してて幸せなハズないだろうッ
_____ムリにでもあきらめさせるのが当たり前だッ
「……憶えているさ」
 不本意そのものの表情で吐き捨てる宗一が、それでもちゃんと認めた理由が感じられて、麗子は不意に微笑ましいような心持ちになった。大事にしてやればいい、目を輝かせて恋人を見上げている後輩も、自分の気持ちも。

「どうしたの?大声出して」
 ひょ、とドアから顔を覗かせた宗仁が客間を見渡して座卓に目を留めた。
「お茶こぼしたのか。ちょっと待ってて」
 すいません松田さ〜ん、と呼ばわって台所に向かう父親を見送り、宗一はどさりと腰を下ろした。
「謝る気はねぇぞ。巴たちのことを認めたわけじゃない」
「意地っ張りね〜」
 てっきり勝ち誇るか、馬鹿にして大騒ぎすると思っていた麗子が非常にあっさりとしていて、宗一は拍子抜けしてしまった。
「それだけかよ。なんか裏があるんじゃねぇのか」
「別に息子のことに比べれば他人事だし。それに宗一くんの弱みを掴んだわけだしねぇ……」
 にや〜、と口の端を上げる麗子に青くなる。磯貝と共通の、面白がる色が彼女にはある。
「お父さまにはまだ言ってないんでしょう。他人からバラされたくはないわよねぇ」
 自分がやったことは棚にあげやがって、と宗一は思ったが何を言ってもやりこめられそうで口を開けず歯ぎしりするのみ。麗子はいっそ女神のように微笑んだ。
「貢たちにも今のところ黙っておいてあげるわよ。ただし、私が知っているということはお忘れなく」
 ほほほ、と高笑いした麗子はふきんを片手に戻ってきた宗仁に辞意を告げると、巴奈の遺影に線香を上げて去った。
「いい人だねぇ〜。こういうのはご縁だけど、付き合いやすそうな方で良かったな」
 息子の攻防を知る由もなく、にこにこと宗仁は居間の片付けに戻っていった。宗一はぐったりと脱力している。
「ね、先輩、もう言っちゃえば弱みじゃなくなりますよ」
 森永は期待を込めて宗一を見上げたが、返ってきたのは無言の赤面と、強烈な一撃だった。



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麗子さん VS 兄さん。そして他人に対して森永くんとの仲を認める兄さんですね。本編で見たいのです(´ ゚Д゚)」キリッ!



 
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Re: タイトルなし

ありがとうございます\(^o^)/
妄想はなかなか尽きません♪幸せな日常です。

ほんと、松田家はオアシスです。麗子さんは磯貝さんと一緒に兄さんをからかって赤面させてほしい(;´Д`)ハアハア
宗仁さんは実はもう気付いていたり・・・という妄想もあったりしますよ(笑)コメントありがとうございました♪
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