PSS【途絶えども火矢のごとく 1】

 洛中の蝶の続き、現代編です。
 ↑第1話にリンクします。それ以外はお手数ですがインデックスからどうぞ。


 今日はリ◯ルワールドに行って来ました。うろうろしていると、かわいこちゃん2人を撮影している集団に行き当たったんです。パンフレットとかの撮影かな〜と思ったのですが、やけにカメラマンが多いし、一般客に対する配慮がゼロです(通行の邪魔&写真スポットを占有)。
 同行者によると、最近はネットで募ってプロ気取りたいアマチュアカメラマンに撮らせてあげるバイト的なものがあるんですって。なるほどこういう場所なら撮影許可とかいらないですもんね。いい時代だなぁと思いながらセクシーポーズをお裾分けしていただいてきました。



【9巻読んだ!】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
鍵コメ下さったRaさま、こちらでは初めましてですね☆コメントありがとうございます!あの描き下ろしにはほんとやられました〜(*´ω`*)ムフ
Taさま、本当はもっと具体的に書きたかったんですけど、3ページ目くらいで無理だと気付きましたΣ(゚ロ゚;感想記事を連載にしそうな勢い(汗)なんですごく大雑把になってしまいましたよ〜(´・ω・`)一般的には普通の購買でおめでとうを言っていただく私・・・逆にすみませんorz
Miさま、丁寧にありがとうございましたm(_ _)mこれでもうばっちしです!Σd(゚∀゚)
Yeさま、こちらでは初めまして!そうなんですよとうとう・・・オフフフ( 艸`*)コメントありがとうございました〜♪




途絶えども火矢のごとく



抱きあっても捉えられない視線の先は
遠い憎しみか失われた過去か
お願いです 俺を
見てください


「ね……気持ちいいですか?」
「いちいち、聞くな」
 ベッドでの問答は、もう幾度繰り返されたか知れない。堪えきれずに時折り漏れ出る声のほかはスプリングの軋む音、衣擦れ、そして微かな水音。
 静かな夜は何を生み出すこともなく過ぎて行く。
「なんでいつもそうなの。一緒に感じたいのに」
 恋人を見下ろす男はその乱れた姿に愛しさを掻き立てられながらも、抱きしめることの叶わない心が腹立たしくてつい、掴んだ手首に力を籠める。
「好きにすればいいだろ……おまえのものなんだから」
 甘い台詞は顔を歪めて吐き捨てられた。恋人”同士”とは呼べない一方的な関係。律儀な彼は約束を守っているだけ。
「じゃあ、そうします」
 歯を食いしばるようにして責め立てるのもいつものこと。抱き合っても、睦言を囁いてもその末に果てても、視線が絡まないのもいつものこと。冷たい身体を合わせても、互いが抱え込んだ孤独が決して埋まらないのもいつものこと_____
 静かな夜が何を生み出すこともなく、またひとつ過ぎた。



「なぁ山口、永遠に変わらないものってあると思う?」
「ぶっ!」
 いきなり発せられたロマンチックな質問に、山口は飲んでいたジュースを噴き出しそうになった。聞いたほうは至極真面目な表情で、いまだ開封していない紙パックをためつすがめつしている。
「……永遠がどれくらいの時間かにもよると思うけどなあ。例えば億年単位なら変わらないものはないと思うぞ。太陽だって死ぬんだからな」
「うーん……じゃあ、100年なら?」
「今度はえらく短いなっ!それくらいならいくらでもあるだろ」
「そうだよね……」
「おまえ何が言いたいの……」
 悩ましげにため息をつく森永を、山口は気の毒に思いながら眺めた。どうやら親友は叶わぬ恋をしているらしい。あまり細かいことは話してくれないが、たまにこうやって落ち込んだ様子を見せる。法や倫理に触れるようなことでないのを祈るばかりだ。
「俺はさ、100年でも200年でも心変わりしない自信があるんだけど。でも相手もそうだったらずっと平行線ってことにならない?」
「両想いじゃないって前提な……?けど女心と秋の空とか言うじゃん。諦めなきゃいつかってことはあるんじゃね?」
「そうだね……」
 本日最終コマの講義が終わって一服、夕陽が周囲を鮮やかな茜色に染めている。自販機横のベンチに並んで座り、通り過ぎて行くまばらな人影をぼうっと見送る親友は、こういう時ひどく虚ろに見えた。相手の事情など知らないが、森永のようないい奴にこんなに想われて、何が不満なのか理解に苦しむ。
「俺もあんまり経験ないからアドバイスとか出来ないけどさー。話くらいならいつでも聞くから」
 おそらく相談されることはないだろう。そう思いながらも一応言ってみる。物思いから覚めたように森永が山口の顔に焦点を合わせるまで、少々の時間を要した。
「ありがと。また今度な」
 森永は紙パックのカフェオレをぽいと投げて寄越した。相談料、と言い残して立ち上がる森永の表情が捨てられた仔犬みたいだと、山口は思った。

 森永が研究室に戻ると、正面の実験台に向かっていた宗一がちらりと目を上げた。
「遅かったな」
「……すみません」
 別に咎めたわけではないらしい。宗一は片眉をひょいと上げると、それ以上は言わず、手元の作業に戻った。マイクロピペットのヘッドを押す軽い音がリズミカルに響く。
「これが終わったらオートクレーブに入れるからそっちのノートに書いてある時間で_____どうした」
 滴下を終えたチップが瓶の中にからりと捨てられる。いとも簡単に、宗一の手でなんの感慨もなく。森永との日々もこうやって捨てられる。夜に何があろうと、朝になればその記憶すらないかのように平然とした顔を見せて。森永は空回る衝動に情緒不安定になり、そしてまた答えのない問い掛けを始める。
 この不毛な営みを、もう100年ものあいだ繰り返している。

 いったん踏み込んだ室内だったが、森永は一歩下がってドアを後ろ手に施錠した。わざわざ錠を下ろす理由はいくらもない。宗一は手を止めて、森永を睨みつけた。
「俺が憎いですか」
「いきなりなんなんだ」
 宗一にとってはいきなりだろうか。森永はいつもいつも考えている。果たして、選択は正しかったのかと。
「後悔してるんですか、約束のこと。俺と離れたい?」
 宗一は険しい表情のまま下を向き、再び手を動かし始めた。
「おまえはちゃんと約束を守ったんだ。そんなことを気にする必要はない」
 それは答えではない。森永は宗一に選択の余地を与えなかったのだから。机を回り込んで宗一に近付いた森永は、実験台の上できびきびと動く手に、手のひらを重ねて縫い止めた。
「キスしていいですか?」
「……そんなことしてなんになる」
 だが白衣の袖を軽く掴んで引き寄せれば、宗一は抵抗はしなかった。
 冷たい唇を重ねる_____最初から、深く。森永は目を閉じて100年前を思い出そうとした。あの時のキスには吐息が溢れていた。温かな……。そのありかを探すように口の中を舌でまさぐると、腕に軽く添えられていた手に力がこもった。
「やめろ!」
 振り払われた手が机の角で固い音を立てた。宗一はもう顔を逸らしてしまっている。
「おまえが好きなのは人間だった俺だろう。もういないんだ。いい加減、現実を見ろ」
 両腕をだらりと下げて、森永は立ち竦んだ。言葉は出なかった。
 森永は宗一を愛している、それは間違いなく確実に。だが恋しいと思うのは残酷なのだろうか_____ぬくもりの満ちた指先を、淡い朱に染まる頬を、唇を震わす熱い呼気を。
「……今日は遅くなる。先に帰って寝とけ」



 森永はひとりで部屋に帰り、リビングの扉を開けた。実際のところ、夜目が効くので明かりは必要ない。だが習慣で手が勝手に照明のスイッチを入れた。
 簡単に部屋の掃除をしてから風呂に入り、髪を拭きながらテレビを付ける。電源を入れたそのままのチャンネルで放送されている番組を見るともなく見た。お笑い芸人や見たこともないタレントたちが騒々しくゆるいクイズに答えている。空虚な笑い声。テレビは駄目だ。どんどん頭が空っぽになって間が保ちやしない。すぐに諦めてテレビを消すと、森永は自室に向かった。
 ドアを開けてしばらくその場に佇む。そうしようと思えば何十年でも眠っていられる。一般的な吸血鬼のイメージのように、どこかの地下室で棺桶にでも入って。独りでは生きられなくても、眠ることはできるかもしれない。そうすればこの痛みから逃れられるだろうか。
 だが眠るのならいつかは目覚めなくてはならない。目覚めたとき独りだったらきっと気が狂うだろう。二度と醒めない眠りならどんなに良いか_____だが宗一をこの世に遺して自ら死に向かうことは、どうしても出来なかった。



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