PSS【途絶えども火矢のごとく 4】

第四話です。

 萌えがない・・・んですけど大丈夫でしょうか(;´Д`)

 ドキッとされた方が多かったらしい前回のブロマイドは、洛中の蝶のとき卯月さんが描いて下さった爵服の兄さんを、これ後で使う予定があります(´・Д・)」と言って確保させていただいていたものです。ムフフぴったりの用途でしたでしょ?卯月さん、ありがとうございました\(^o^)/唐突に出してごめんなさい・・・そのほうがカッコいいかと思って(´・ω・`)

 結構過ぎてしまって今さらなんですが、恒例のキリ番リクエストは今回お休み致します。ちょっと色々・・・溜めすぎていて。書きます宣言したものだけでも捌けてから、次の募集をしたいと思います。10000までにできるといいな〜その時にはまたよろしくお願いしますm(_ _)m

 更新のない間にもご訪問下さった方々、過去記事のたくさん拍手を下さった方、ありがとうございます!萌えがない部分はなかなか進まないもんですね・・・兄さん登場しないし←

【完全な乗っかり記事】【途絶えども〜 3】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
鍵コメ下さったChさま、兄さんは動かざること山の如し!どうせロクな罠じゃあございませんが・・・イラスト良かったでしょ〜♪




寄り添えないのなら
永遠に引き離されたいのです
応えられないのなら
その牙で切り裂いて打ち捨ててください



_____食事もトイレも必要ない虜囚は楽でいい。

 森永は顔を膝の間に埋めたまま、もう何時間と身動きひとつしていなかった。
 願っているのはひとつだけ。宗一が、自分などを助けに来ないこと。
 三好は二人がいることを突き止めた上で大学を移って来たのだった。森永を呼び出したのが第一手、宗一の正体と引き換えに、実に手際よく森永の自由を奪った。森永らの生態をどう調べたものか良く知っていて、接触する隙を与えないよう練り上げられた手順だった。

_____昼間に出歩けるし、ニンニクも十字架も平気なかわりに超人的な力もない。不死身ではないし、霧やコウモリになることもない。

 三好の研究室で選択を迫られ、諾々と従った森永は自ら猿轡をかんで目隠しをし、両手首を差し出した。用意されたリフト付きの台車上の箱に入り、そこからの経路は定かではない。構内で目立つのではと思ったが、道中話しかけられることはあっても不審の声はなかった。必要に関わらず、カモフラージュのため普段から使用していたに違いない。

_____用心しているようで迂闊だな。巽宗一が生き続けている証拠を、私はたっぷり持っているんだ。

 数時間車内に放置され、その後この建物に連れて来られた。布の枷は皮と鎖に変えられ、閉じ込められたのは3m四方ほどの頑丈な檻だった。単なる捕獲用ならば広いとも言える空間だが、首と腰に巻いたベルトからぶら下がる鎖の端は檻の中央で床に固定され、その長さはせいぜい2mだった。しかもご丁寧に片足首、さらに後ろ手にまわした手首まで拘束されている。 森永から確実に距離を取るための措置だろう。

 三好はここを研究所などと呼んでいたが、見たところ廃業した町工場を改装したものらしかった。壁沿いには処分しきれなかったものか、工作機械や棚、工具や部品などが雑多に寄せられて埃を被っている。場所の検討はつかない。こういった工場が立ち並ぶ区画は、名古屋周辺にはいくらでもある。
 檻の背面にある観音開きの大扉には錠が下ろされ、出入りは正面側の大扉、もしくはその横の通用口を利用しているようだ。通用口側には鉄階段が掛けられ、上階へ続くようだったが一階の天井にあたる部分に貼られた大きなキャンバス地でそれ以上は視認できなかった。空間の広がりや壁に走る配管やコード類からしても、森永の囚われた部屋の天井は、二階建てほどの高さはある様子だった。

 目隠しを取った森永の前に現れた三好の姿は、一種異様だった。防護服で全身を覆い、まるで今から薬品散布でも始めようかという様子だ。しかし森永らから身を守るのに有効であるのは確かだった。
 三好が階段を上がっていって、どのくらい経つのだろう。森永は確かに人ひとり殺している。だがそれは森永にとってみれば正当防衛のようなもので、今まで良心の呵責など感じたことすらなかった。

「なぜこんなことを」
 疑問は本心だった。だがそれは三好の憎しみを強烈に煽り立てた。
「なぜ?!ははは!まさか君にそれを聞かれようとは!」
 ボイスエミッターを通した声はこもってひび割れた。顔全体を覆うアイピースの向こうは憎悪に歪んでいる。
「君らにとっては人間の命など取るに足りぬものなんだろうな。だが我々は忘れんぞ」
 三好は堰を切ったように喋り始めた。他人には言えない人生の目的を、誰かに話したくて堪らなかったのかもしれない。

 三好侯爵には当時8歳の孫がいた。これが三好准教授の祖父にあたる。侯爵から殊に可愛がられていた彼は東京から遊びに来るといつも、侯爵の寝室の続き部屋で寝るのが習慣だった。その晩も_____
 話し声で目を覚ました彼はドアから寝室の様子を窺った。そして目の前を黒い影がはしり、侯爵に襲いかかるのを見た。皓々と照らす月明かりのもと、黒髪の悪魔に噛みつかれた侯爵がこと切れる瞬間も……。ベッドに潜り込んでひたすら祈り、朝を迎えたときはどんなに心強かったことだろう。しかし侯爵の死の真相を周囲に伝えようとしても、悪夢を見たのだろうと相手にはされなかった。

「侯爵が殺されたせいで会社の株は大暴落し、そこに恐慌が追い打ちをかけた。曽祖父は継いだばかりの爵位を返上せざるを得ず、一族は泥を舐めるような生活を強いられたんだ、貴様らのせいで!今だってそうだ!卑怯なやり口で生き残った巽家は地元の名士だ、たかが元伯爵の分際で。私は大学に行くのに借金までしなければならなかったんだぞ!!」
 激昂した三好は驚いている森永を見て我に返り、髪を撫で付ける仕草をした。実際にはヘルメットと手袋で阻まれたが。
「祖父はその後数年経ってから、侯爵の遺品に森永男爵の資料を見つけた。死の直前、侯爵は君のことを調べていたんたよ。忘れもしない黒髪の悪魔に、祖父は復讐を誓った。私も子どもの頃から繰り返し言い聞かされてきた……海外も含め数年単位で移動する君らを追うのは骨が折れたが、ようやく追いつめた」
 プラスチックを通して見える表情は妙にのっぺりとしていたが、瞳には爛々と狂喜の色が踊っていた。
「俺にどうしろと」
「なに、簡単さ。研究に協力してくれればそれでいい。君らの不死の秘密はさぞかし高く売れるだろう。私も少々味わってみたいからな……この年までかかってしまったのは残念だが、周りが老いさらばえていくのを見るのは愉快だろう」
 森永は顔を歪めた。自分たちだけが変わらず、取り残されていくことの哀しみなど想像もつかないのだろうか。森永とてそうだ。以前にはかなこがいた。宗一がいなければ、とうの昔に発狂していたかもしれない。自暴自棄になって正体を晒し、狩られる側になる。想像したことなら、何度も。
「やめておけ、後悔する」
 そうでもないだろうか。永い生を、人間を糧とする生き方を楽しめる者もいるのだろうか。

「命乞いなら聞く気はない……そんな暇もないもんでね。夜には巽宗一がここへやって来る。人質交換するつもりなのさ。麗しい友情というわけだが、私はお涙頂戴は嫌いでね。君を餌に、私は労せずして二匹のモルモットを手に入れるというわけだ」
 聞き捨てならない言葉に、森永は憤然と身を起こした。立ち上がろうとしたが、鎖に阻まれて膝をつく。反動でたわんだ鋼が耳障りな音を立てた。
「俺が言うことを聞けば宗一さんには関わらないと約束したじゃないか!!」
「化け物相手に約束など」
 言い捨てた三好は薄笑いを浮かべていた。はじめからそのつもりだったに違いない。森永は罪滅ぼしのためではなく、これで宗一が自分から自由になれるのならと三好に従った。だが宗一がこの男の研究材料になるなどということは、あってはならない。喚く森永を心底嬉しそうに眺め、三好は階段を昇っていった。防音に自信があるのだろう。どんなに叫ぼうとも気にする様子もなく、森永は物のように放置されている。


「宗一さん……来ないで……」
 小さく呟くと、森永は抱えた頭を更に強く抱き込んだ。


      

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