PSS【エンデュミオン 3】

 子ども向けの「おうたえほん」なるものがあるのをご存知ですか?表紙をめくるとボタンが並んでいて、押すとメロディーや歌が流れるおもちゃです。
 先日それの”みんなの童謡”的なやつを見たんですが、なんとドラ◯もんのうたが!いつの間に童謡カテゴリに・・・!さすが国民的おばけアニメ・・・!
 ちなみに初めて2番以降の歌詞を知ったのですが、セリフの入る部分。3番は「ウフフフvど◯でもドアー!」
 言ったのかな兄さん・・・ウフフフ・・・v


【エンデュミオン 2】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
 鍵コメ下さったTaさま、やつれ果てた姿が愛しいとはチーム森の鏡・・・!でもハダカの兄さんがいつまで厳かと見てていただけるものでしょうかね〜(・∀・)
 Chuさま、シャ◯ルの5番的なアレですね(;゚∀゚)=3ハァハァ元ネタは最終話までお待ち下さいねっ(^ ^)
 Soさま、フォローありがとうございます(・∀・ι)続きもがんばります!





 波の音が聞こえる。
 飛び起きて周りを見回し、森永はほっと息をついた。部屋は相変わらずの薄暮に沈み、添い寝人は安らかに眠っている。真紅のびろうどに囲まれたこの部屋では時間がわからない。森永はそっと寝台から滑り降りると、裸足のまま部屋を出てホールに向かった。
 女からは他の部屋に入らないように言われているが、部屋を出てはいけないという意味ではないだろう。海が見える窓から外を覗くと、ちょうど夜が明けるところだった。

 ぬば玉の闇を見つめていると、ある瞬間それが空と海であることに気付く。それらを分かつ一本の糸が、上に向かって紺青を編み上げていく。真一文字に東雲を走らせた水平線にぽっ、と金色の火が点った。墨を流したような海面をみるみるうちに炎が呑み込み、闇を駆逐する勢いで空を焼き、隠されていた雲を朝に曝け出す。いや、隠されていたのではない。そこに在ったのに見えなかっただけだ、あの人の気持ちのように。
 板が軋む音がして、森永は朝陽から目を逸らした。音がしたほうを見ると、階段の踊り場で手摺りに手をかけて女が微笑んでいる。
「おはようございます。お眠りになれましたか?」
 一度寝室に戻ると女の手を借りて着替えを済ませ、森永は階下に降りた。部屋を出るとき振り返って見ると、添い寝人はまた背を向けてしまっていた。後ろ髪を引かれるような想いに森永は小さく自嘲した。相手は、自分に会ったことさえ知らない。

 女は食堂にワゴンで朝食を運んできた。この女が用意したとも思えないが、他に姿を見せるものは下働きさえいなかった。粥と漬け物に佃煮という質素な内容はこの洋館に不似合いな気もしたが、その素朴さが弱った胃に却って食欲的だった。食事を前に唾液が湧くのを感じたのはどれくらいぶりか知れない。
 女は特に何も言わず、丁寧に給仕をした。不寝番を勤めてでもいたのだろうか。いざという時に駆けつける男手はあるのだろうか。いざという時……昨夜は禁を破りたくなるような気持ちに全くならなかった自分に、森永は改めて気付いた。
「あんな無防備で、間違いが起こったことは今まで無いのかい?」
 食後の茶を出して給仕を終え、向かいの椅子に腰掛けた女は唐突な問いにも焦る様子はない。
「こちらにいらっしゃる方は皆さま、それどころではありませんから。快復なさってお体に余裕がお出来になりますと、お顔つきでわかります」
 そうなると治療は終了というわけだ。つまり、彼とも会えなくなる。森永が俯いて茶を啜っていると、女がついでのように付け加えた。
「実を申しますと一度だけそういったことが御座いましたが……その方はお亡くなりになりました。不眠を苦にして自害なさったそうで」
「………」
 女の微笑みからは、それが”相応のこと”であるのかまた別のことであるのかも読み取れない。ただ淡々と言う口調には憐れみは少しも含まれていなかった。盗み見るように女の顔を上目で見た森永は、その左目の下に小さなほくろがあることに気が付いた。昨夜は気付かなかったものだ。
「で、彼には次いつ会えるの」
 ほくろから目を逸らして湯呑みを茶托に置き、女のほうに押しやる。返答のないことに不審を抱き、今度は真正面から見つめると、意外にも女のほうが目を伏せた。
「次は三日後、その次は一週間後と間を空けていくのをお勧めしています。……ですが、次回にはまた別の添い寝人をご用意致します」
「えっ……」
 予想もしていなかった返事に、森永は戸惑った。いずれ会えなくなると知っていても、昨夜限りとは早すぎる。
「なぜ」
「そういう決まりで御座います」
「誰が決めたんだ!俺は彼でなくては嫌だ。彼が他の誰かと寝るのも嫌だ」
 言ってから、そうだと思った。そうだ、彼でなくては嫌だ。美しいエンデュミオン、あの安らかな寝姿。
「駄目なら彼の名前……、名前と連絡先を。自分で交渉する」
「できかねますのよ……森永さま。どうぞ困らせないで下さいまし」
「嫌だ!!」
 叫んで椅子から立ち上がった森永は、目眩を起こして食卓の縁に縋った。体力が落ちているためすぐ息が上がる。口論すら出来ないとは情けない。女が立ち上がって森永に近付き、手をまわして背を軽く撫でた。
「頼むよ。治療費の上乗せでもなんでもしてくれていい。決して無体なこともしないと誓うから」
 弱々しい森永の懇願に、女は溜息をついた。間近で見ると、泣きぼくろの目元は優しい表情をしていた。
「私の一存では……何とも。話はしてみます。それでよろしいですか」
「有難う」

 しつこいほど念を押し、三日後の約束を取り付けてから森永は洋館を後にした。昨夜やってきたときは義理のため嫌々足を運んでいたのに、今朝のこの浮き立った気持ちはどうだ。
 数時間夢も見ずに眠れたことも、足取りを軽くする。人肌の温もりや熟睡する寝息が、あれほど眠りを誘うものだとはついぞ知らなかった。女は”眠り方を思い出すお手伝い”をするのだと言っていたが、言い得て妙だ。眠れなくなってから初めて、この苦しみから抜け出せるかもしれないという期待が森永の中に生まれていた。



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