PSS【エンデュミオン 4】

 嬉しいお知らせです(ノ^∇^)ノ゚.+:。

 六条さまがエンデュミオンのイメージ絵を描いて下さいました!
 すでにご覧になった方のほうが多いとは思いますが、記事こちらになります↓

「描いてみた215枚目 Endymion」
 防腐剤FREE


 兄さんの裸体・・・!一部の方に好評なやつれ森永くん・・・!絵の力をしみじみと実感いたしました(*´ω`*)ハフン
 兄さんの大事なところを隠しているお花は浜木綿です。「お邸に飾ってあるとしたらどんな花か」とのご質問にわりと大雑把なイメージでお答えしたんですが、これが調べるほど色々都合よくてですね!お話のほうでも使わせていただくことに(・∀・)
 お話のキーポイントとなるモチーフが絡まり合い、美しいだけでなく、非常に印象深いイラストになっております。
 六条さん、この度はまことにありがとうございました!


【エンデュミオン 3】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
 鍵コメ下さったRoさま、森永くん可哀想萌えな方は結構いらっしゃるようで(^ ^)後れ毛・・・そういえば( ゚∀゚)アハ でも色気は十分にありますから(*´ω`*)ムフ 今回もありがとうございました!!




「また会えたね」
 三日後、森永は再び深紅の部屋を訪れていた。女は添い寝人に負担がかかる分と説明して増額を要求したが、構わなかった。人間の感情など調子の良いものだ。あれほど森永を責め苛んでいた記憶は、新しい恋によって塗り替えられようとしている。
「君がいないとやはり眠れないよ」
 今度は迷うこともなく、森永は素早く着替えて布団に潜り込んだ。すでに添い寝人は深く眠り込んでいる。

「エンデュミオン……俺のこと待っててくれた?」
 横たわる青年の額にかかる髪をそっと指ですくった。光を鈍く弾く茶色の髪は、現実離れした心地にさせる。
「瞳の色を見たいな。やはり明るい色なんだろうか」
 長い睫毛は細かく震えている。瞼はきっちりと閉じておらず薄く眼球が見えるが、瞳の色が分かるほどではない。瞼をめくることはしなかった。それは意識のない相手にすることであり、まるで彼の目覚めを妨げる行為のように思えた。
「君は幾つかな?寝ていると幼く見えると言うし、俺より少し年上だと思うんだ」
 あの人は二十一だ。兄も、もしかするとエンデュミオンも。自分だけがいつまでも年下で彼らに追い付けない。
「……兄さんはとても優秀な人でね。俺は何をやっても敵わなかった。所詮俺は次男だから、敵う必要もないんだけど」
 森永は仰向いて天井のびろうどを眺めた。大小の襞に柔らかい艶が映え、それは内臓の色をも連想させる。

 次男という立場が不満なのではなかった。ただ虚しかった。何かあったときにはお前が、と兄の後を追うように躾けられ、学ばされている。だが何もなかったら?自分は一生兄の備えなのだろうか。
「実を言うとね、あの人が兄さんを好きなのには気付いてたんだと思う。もしかしたら兄さんもって。だけど兄さんは長男だし、親の決めた通りに結婚したから……あの人を手に入れたとき、勝ったと思ったんだ。何にかはわからないけど、勝ったって」
 自分は兄の添え物ではないのだと、自分に納得させたかったのかもしれない。それともただ兄に敗北感を味あわせてやりたかったのか。無邪気を装って安らげる場所をちらつかせ、淋しそうな笑顔ごとあの人を手に入れたと思った。だがそんなものは幻想だった。
「あの人は俺を裏切ることに罪悪感を感じただろうか。それともそもそも裏切るほど、俺に気持ちがなかったんだろうか」
 添い寝人は答えない。単調な寝息と波の音が合わさりそうで、少しづつずれていくのがもどかしい。
「わからないんだ、何ひとつ。そのまま家を出て来たし……」
 向き直ってまた髪に触れると、彼は眉間に皺を寄せて歯を軋らせた。まるで森永に腹を立てているようだ。
「そうだよ、怖いんだ。誰にとっても俺が一番じゃないって認めるのが」
 本当は分かっている。あの人にとっても自分は兄の身代わりだった。いつかそれ以上にと願った自分の気持ちがただの意地ではなかったと、誰に言えるだろう。
「結局俺は逃げてるだけなんだね。でも逃げられなくて、夢の中まで追われてる。でも、誰に?」
 あの甘い笑み。愛される喜びに空気までが色づいて。
「俺?俺自身?」
 眉間の皺を指でさすると、鼻から息が抜けた。皺は一層深くなり更に口元も歪んで、もごもごと寝言にもならない音を漏らす。
「厳しいなぁ、エンデュミオン」
 くすくす笑うと急に眠気が差して、森永は布団の中で身動きをすると楽なように身体を落ち着けた。

「手を取って眠ってもいいかい?」
 森永は、枕の上に投げ出された彼の手を握った。指を絡ませると、感触を確かめるように細い指がうごめく。ひとしきり握ったり放したりを繰り返したあと、彼は繋いだ手を胸元に引き寄せた。鼻息が手の甲を掠めていく。
 指先は手入れをされず、荒れていた。爪の形は不揃いで断面は角が立っている。磨かれてもいないので表面にも筋が目立った。水仕事もするのだろうか、爪の付け根には逆剥けも多く、節くれだつ指は乾燥して肌理が粗く見えた。胸などの肌は女が羨みそうな細やかさなのにだ。
 油気の少ない手のひらはさらりとして温かく、森永は自分の汗ばみが気になった。手を放そうとしたが指はしっかりと握りしめられていて、軽く引っ張ったくらいでは解けそうにない。
「君は恋をしたことがあるの?ねぇ、エンデュミオン?」
 元恋人は森永とともに眠りに就いたことはなかった。当時は人の目を気にしてのことと考えていたが、実は心の距離だったのかも知れない。
「俺は君が好きだな……」
 
 もちろん、答えはない。



「ここはどういった施設なの」
 朝食を終えて茶を飲みながら、森永は食堂を見渡した。庭に面した大きな窓があって室内は明るい。施設と言うのも治療院と言うのもあたらない気がするが、他に何と言えばいいのかわからなかった。
 女は四人掛けのテーブルで森永の向かいに腰掛けていた。その背後、廊下に出るドアの横には季節柄使われていない暖炉がきちんと掃除されてあり、マントルピースの上には浜木綿が活けられている。そう言えば邸から見下ろせる砂浜に群生しているのを見た。
「施設も何も……ただの家ですわ。お困りの方に安らかな環境をご用意して差し上げるだけで」
 女はしとやかに目を伏せている。彼女はここで暮らしているのだろうか。それにしては生活感というものが感じられない。
「なぜこんな効果のある治療を隠れるようにやっているの」
「私どもはお医師ではありませんし……貸し座敷と思われても嫌でございますから」
 確かに客を選ぶ必要性は高いだろう。一歩間違えば遊女屋と変わらないことになってしまう。だが単に娼妓を抱かずに侍らせたからと言って、不眠症が治るとはとても思えない。
「添い寝人はどうやって選んでいるの?まさかかどわかしているのではないのだろうね」
「もうお時間ですよ。お帰り下さいまし」
 女は笑顔のまま、ぴしゃりと言い放った。むっとして森永が言い返そうとすると、小さな手のひらが遮るように翳された。
「森永さま、どうぞそれまでに」
 物言いは柔らかいが、女の態度には取りつく島もない。森永は質問を諦めて溜息をついた。本当はここで時間を稼げば彼が目覚めるのではないかと期待していたのだ。しかしそう甘くはなかったのである。仕方なく立ち上がり、女の先導を待たずに食堂を出ようとすると、芳しい香りに足が止まった。浜木綿が細長く白い花びらをあちこちと気ままに散り広げている。

 花にとって死はいつの瞬間だろうか。手折られたときか、それとも枯れ果てたときか。その身体に満ちた生気を使い果たすまで、生きながら死んでゆく。眠ったままゆっくりと_____燠火のように芳香を漂わせながら。



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