PSS【エンデュミオン 5】

 第5話です。

 先日朝、出掛けようとしたら車のバッテリーが上がっていてオロオロしました。そう言えば前日車内灯が付けっぱなしになっていたかもしれない・・・orz
 ロードサービスを利用して事なきを得たんですが、色々とバタバタしてしまいました。
 その後夕方帰ったとき車内灯が消えたことを確認して家に入ったのですが、しばらくして玄関のインターホンが鳴り、出たらこの一言。「車のヘッドライト付けっぱなしですよ」
 ありがとう、郵便屋さん。


【グッドラック〜】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
 鍵コメ下さったTaさま、服が破れるほどのムフフvがあったんでしょうね〜(・∀・)もう常連になればいいと思います。動物モチーフ個人的にも探そうかな〜♪
 Roさま、去年のにもコメントありがとうございます!めっちゃメンズ服サイト閲覧した結果ですけどねww森永くんの技は天井知らずですΣd(゚∀゚)




 洋館を訪うと、ポーチで女に迎えられるのが常だ。いつも車でやって来る森永だが、車は帰し、翌朝改めて迎えに来させるのも、守るよう定められた決まりごとだった。それは警戒なのか、隔絶された環境を作るメソードなのか、単に運転手の世話まで手が回らないのかはわからない。
 必ず一度応接室に通されて一杯茶を飲み、それから女が二階へと促す。彼女は例の部屋の戸口まで森永を案内すると下がり、その後どこに居るかはわからない。朝になると扉を叩いて起こしにくる女が着替えを手伝ってくれ、階下へ降りると用意された朝食を取り、済めばすぐ帰される。予約した時刻以外の訪問も禁じられていた。

 女は答えるつもりがないことには、無言で微笑むのみだ。聞きたいことも、望みたいことも山ほどあるが、一度ここの寝台の味を知ってしまうと女の機嫌を損ねるのが恐ろしい。
「彼に聞いてみて欲しいんだ」
 応接室での交渉も毎度のことだが、切り札を持たない森永は絶対的に不利だ。ただ請い願うより他に術がない。
「つまり、彼が望むのなら構わないんだろう?俺が会いたがっていると伝えてくれれば良いんだ」
「森永さまは何か勘違いをなさっているご様子。私は遣り手ではございませんのよ」
「遣り手だなんて」
 侮るつもりは毛頭ない。慌てて否定するものの、女の目に浮かんだ面白がる色を見て、からかわれているだけだと森永は悟った。では、と今度は手を変えてみる。
「今日は彼に贈り物を持ってきたんだ。これくらいは許されるだろう?見ての通り手紙など付けていないよ」
 沈黙を肯定と取り、気を良くして森永は席を立った。いつの間にか女のことを、自分と彼の間の障壁のように感じている。問題は別のところにあると、分かってはいるのだけれど。


 四度目の逢瀬、今夜の添い寝人はうつ伏せて眠っていた。両腕を肩の上に回し、左頬を押し付けて枕を抱き込むようにしている。肩甲骨の隆起がネコ科の獣のようにしなやかに伸びていた。
「今日は贈り物があるんだ。夕闇が落ちてから摘んだものだから、良い香りだよ」
 布団ははねてしまったのか、腰の辺りまでが剥き出しだ。特に肩幅があるわけではないが腰が細いため逆三角形に見える背中は露わ、尻のふくらみが布団の陰から僅かに覗いている。立てばきっと姿勢良く俊敏だろう。そういう、バネの効きそうな背筋だった。
「花言葉は”穢れなき”。君にぴったりだ」
 青年の顔の前に一輪の浜木綿をそっと置き、森永は寝台から離れた。着物を脱ぎながら、前回から今日までに起こったことなどを話して聞かせる。
「俺の部屋も紅いびろうどを掛けてみたんだよ。明かりの加減が難しいけれど、この部屋を思い出して眠りやすい」
 枕に半分ほど埋れた寝顔を飾る花を満足気に見やり、寝間着を身に付けた森永は寝台の端に腰掛けた。青年の頬にかかる髪を指ですくい、耳の後ろに撫で付ける。彼はくすぐったいのか首を竦めて森永の指から逃げようとした。

 青年は体毛全体がそうだが、髭も薄いようだ。顎を撫でても産毛のような手触りしかしない。今朝にでも髭をあたったのだろうか、もみあげの辺りに小さな切り傷がある。瘡蓋になってはいるが、まだ新しい。森永は赤茶色の筋にそっと爪を立ててみた。少し力を籠めると簡単に瘡蓋は剥がれたが、剥がすには早過ぎたようで、傷口にじわりと血が滲む。ごく少量のそれが小さな粒を作るのをじっと待ち、森永は舌を伸ばした。座ったまま腰を曲げて肘をつき、顔を寄せて紅い雫を舐めとる。微かな錆の味を舌の上で愉しみ、そのまま身を伏せた。浜木綿を挟んで向かい合い、まるで最後の別れに花を手向けたようだと思う。目を閉じたとき胸にあったのは、微かな罪悪感だった。




 _____はじめから、愛してなど

「………っ!!」
 喉の締まる息苦しさに、森永は飛び起きた。咄嗟に状況が分からず、忙しく周囲に目を配る。
「あ……」
 柔らかな日没の色、楢のヘッドボード。敷布を握りしめる自分の手。息切れを無理矢理抑えて唾を飲み込むと、駆け出しそうな姿勢で緊張していた身体を緩め、息をついて身を沈める。
「エンディミオン……」
 うつ伏せて縮こまっていた森永とは対照的に、彼は仰向いて腕を投げ出していた。軽く丸まった手が目の前にある。森永はその手首を縋るように掴んだ。苦痛も悪夢も彼には届かない。
「俺を見て……」
 手首を引き寄せ、肩を掴む。んん、と眉間に皺を寄せた青年は手で払いのける仕草をした。
「俺を見てよ」
 構わず、掴んだ肩を揺さぶる。衝動のままに抱きすくめると、がくんと首が仰け反った。喉仏に噛み付くようにくちづけて、吸い付いた首筋に痕を残す。
「頼むから……!」
 駄目だ。無体なことはしないと誓ったではないか。想いを遂げて、そしてたちまち失うのか。こうでもしなければ彼は手に入らない。手に入れればそれでいいのか。彼は自分の存在すら知らないのに_____

 想いは千々に乱れる。青年の二の腕を掴んで敷布に押し付け、混乱のまま奪った唇に感じた苦味に、森永ははっとして身体を引き離した。
 そのまま転がるように寝台を降り、手水に飛び込む。こんな風に欲望を覚えるのは、どれくらい振りだろう。ただ情けなさだけが募って目が潤んだ。西洋風の便器にしがみつくようにして自慰をすると、目眩のするような感覚に勝手に声が上がる。気の済んだ時には身体中が震えていた。
 床に座り込み、森永は少し泣いた。ただ、エンデュミオンの顔が見たかった。

 森永はその後、寝台の足元に腰掛け、朝まで添い寝人を見つめていた。隣で横になろうという気はしなかった。安らかに眠る青年は布団の中で時々寝返りをうち、何度かは寝言も言った。何を言っているか知りたいのに、はっきりと聞き取ることができない。だから断片的な言葉に、じっと耳を傾けている。
 扉が叩かれたのはそれから随分経ってからだったが、森永は微動だにしていなかった。視線を外さないまま、淡々と応じる。
「今行くよ。着替えは済んでいる」
 彼の首筋と胸には、森永の付けた痕が鮮やかに浮かび上がっていた。彼は気付くだろう。
 
 もう、お終いなのだろうか。



 二週間後予定通り洋館を訪れたが、女は通常通りの態度で森永に接し、口づけ痕については言及しなかった。”軽く触れる”以上のことだと森永は思ったが、そうではなかったのか。それとも、彼が黙っていたのか。
「エンデュミオン」
 森永は部屋に入ると、扉の前に立ったまま寝台に向かって話しかけた。
「今日は君に謝りたくて……」
 相手が眠っていることは重々承知の上だ。だからと言って声に出さずともよしとすることは出来なかった。森永にとって彼は、添い寝人形ではないのだ。
「禁じられているからとか、そういうことではないんだ。君がそうやって許してくれるからと言って、君の意思も確認せず触れたのは良くなかった」
 ではどうやって意思を確認すれば良いのだろう。その点に関しては打つ手がなくなっていたが。
「エンデュミオン?」
 初めて姿を見たときのように、彼は背を向けて髪だけを見せていた。森永は寝台に近づくと、布団に膝を載せて彼の肩に手をかけた。力を籠めると上半身が仰向けに倒れたが、その動きはいかにも身が重かった。
「どうしたの。何か……」
 いつもとどうも様子が違う。眠っていても寝言や身動きが活動的な彼なのに、今夜はやけに静かでピクリとも身動きをしない。胸の微かな上下から呼吸をしていることはわかるが、寝息も浅いようで耳に捉えることができない。

 背筋を這い登る不安に押されるように、森永は添い寝人の腕を取った。間違いなく人肌の柔らかさと温もりが感じられるのに、ぐんにゃりと力の抜けた様はまるで糸の切れた操り人形のようで、森永はぞっとして手首を離した。重力に拮抗することなく、腕は支えを失って落ちた。
 指先から漣のように震えが広がる。瞬きを忘れるほど青年の顔を見つめていた森永の目の端に、枕の向こうに置かれた細長い茶色のものが映った。目を凝らすと、それは萎びて枯れた浜木綿だった。森永に付き纏っていた死の影。忘れていた悪夢を目前にした思いだった。死がかの花の生気を吸い尽くし、次に向かうのは_____身を翻すと、森永は部屋を飛び出した。



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>Miさま

さすがに拍手・・・直ってますよね?お手間かけさせてしまってm(_ _)m
ね、こんなところで襲ったら犯罪ですしね。恋を大事にして欲しいです。浜木綿はもうひと働きしてくれますよ!花と言うより葉が大きいのかなあ、ワカメみたいですもんね。続きもよろしくです!
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