PSS【The White Wolf】

 兄さんディですね。

 家の近所に白バイさんの張り込みスポットが密集している一帯があります。毎日誰か捕まっています。地元民はそれを横目に見ながら妄想するわけです、ハイ(´ ゚Д゚)」そして改めてお伝えしておきますが、全て妄想ですのでご了解下さいm(_ _)m



【エンデュミオン 6】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
 鍵コメ下さったTaさま、今回黒川夫人が一番の謎多き人でした(・∀・)みんな好きと言っていただけて嬉しいvありがとうございました!
 Miさま、今後幸せになれるかどうかは森永くんの腕にかかっていますけどね(・∀・)ご質問(?)にはノーとお答えしておきます。コメントありがとうございました!




The White Wolf



「うーーっ!あっち!!」
 基地に到着すると、山口は大急ぎで冷房のかかった事務所に駆け込み、冷蔵庫に入れておいた麦茶を一気飲みした。初夏と言えども遮るもののない青空の下、長袖の制服で張り込むのはサウナで我慢比べをするようなものだ。白バイ隊員は憧れて就いた職業だが、こういう地味でキツい仕事ばかりが続くと、人生の選択肢を間違って選んだのではないかと過去の自分を恨めしく思うことも、そう稀なことではない。
 幸い空いていた休憩所のベンチにだらしなく座り、汗で貼り付いたシャツごと冷やすように胸元を開けると、首を振る扇風機に合わせてゆっくりと振り子運動をする。

「あ、山口おつかれ〜」
「うーす」
 こちらも胸元を開きながらやってきたのは同期の森永だ。ヘルメットを腕にぶら下げたままグローブを脱ぎ、汗でぺたりと張り付いた髪を手櫛でときほぐしている。交通課の女性警察官が密かにファンクラブを結成しているとか、違反切符を切ったドライバーから逆ナンされたとか、モテエピソードに事欠かない恵まれた体型と容姿を羨んだことがないわけではないが、森永自身は非常に運のない、気のいい可哀想なヤツだと山口は思っている。

 山口が横にずれて空けたスペースに座りジュース缶のプルタブを開けた森永は、仰け反るようにして背後の窓から喫煙スペースを覗き込んだ。
「なぁ……お前いつまで巽さんのケツ追っかけてるつもりなんだよ」
「えっ?」
 おそらく外では巽がタバコを吸っているのだろう。同期は全員OJT期間を終了して単独行動を許されているのに、森永だけはまだ巽の指導下から離れられていない。
「いつまでって別に……」
 手の中で缶をくるくる回す森永が不出来というわけではない。むしろ昨年度の競技大会では準優勝したほどの腕前だ。なのに細かいミスを咎められて、いつまで経っても新人扱いされている。
「箱根の先導も夢だったんじゃないのか」
 森永と山口は訓練所でも一緒だった。駅伝の先導役に憧れる者は多いが、同期の中では森永が最も選ばれる可能性が高いと言われていたものだ。
「そうなんだけどさ……神奈川は遠いよな」
「もしかして好きな子でもできたのか?交通課の子とか?!」
「いや、そういうわけじゃないんだけどさ……」
「なんだよ、ハッキリしないな〜」
 箱根駅伝の管轄は神奈川県警だから、先導に選ばれるためにはまず神奈川に異動しなければならない。独身で身の軽いうちがチャンスだし、森永だって異動希望を出すと言っていたのに。

 飲み物を口にしながら談笑していると、突然ガンッと背後の窓ガラスが揺れた。驚いて振り向くと、噂の巽 ”一匹狼” 巡査部長がおっかない顔で二人を見下ろしている。
「おい、いつまで休憩してんだ!行くぞ!」
「げ、巽さん」
「すいません先輩、すぐ行きます!」
 慌ててジュースの缶をゴミ箱に放り込み、ヘルメットを掴んで駆け出して行く森永を、山口は憐憫の眼差しで見送った。確かに巽は全国的にも有名な超絶テクニックを持ち尊敬すべき点は多々あるが、如何せん厳しすぎる。噂によると途中で逃げ出す者が続出したため、数年間ずっと巽の下に新人は回されなかったほどらしい。だがOJTの指導係を経験していないと巽を昇進させることが出来ないため、巽が認めるかもしれないくらい技術の高い森永をダメもとで配置したという話だ。少なくとも森永は文句も言わず耐えているわけだが。
「頑張れよ、森永……」
 森永が夢を叶えるのは、いつの日か。山口は親友として応援を惜しまないつもりである。


(ケツを追っかける、か……)
 ルートを確認しあって自分のバイクに向かいながら、森永はちらりと宗一のほうを盗み見た。計器類のチェックも終えた宗一は、長い髪をざっくりまとめてヘルメットに押し込んでいる。
(山口はそういう意味で言ったんじゃないだろうけど、核心をついたな)
 教育期間中は、先を行く先輩を後輩が追いかける形で移動する。そのことを言っているだけだとわかってはいるが。ハンドサインを交わして素早くバイクに乗った森永は、指差し確認をサボって前方を凝視した。
(ああ今日も、なんてかっこいい後ろ姿だろう)
 メンテナンス完璧な愛車に颯爽と跨がる宗一の勇姿。細い脚が力強くスターターをキックする。
(たまんないな、あのふくらはぎ……)
 上半身が前屈みになると青い制服が動作に引っ張られ、突き出された小尻の形を露わにする。座りの良い場所を探して腰の位置を微調整する様は、まるで触ってくれと森永を誘うかのようだ。
(あんな厳しいのにこんな可愛い身体なんて反則すぎる……あの隙のない制服を乱して蕩かしてぐずぐずにしてやりたい)
 日差しのせいでなく熱くなる身体に、森永は慌てて深呼吸をして気を落ち着かせた。前を見れば宗一はもう発進してしまっている。

 森永のミスは大半これが原因だった。宗一に見惚れては妄想し、周囲への注意を怠る。それが良くないことだとは分かっていても、結果として宗一にくっついていられることが森永を増長させる。恋が実ることはないと思うものの。
(今の夢はマラソン選手のコースじゃなくて、先輩のアッチ方面をリードすること……なんてウフフ)
 道は急カーブに差し掛かる。上体を残したまま滑らかに車体を倒す腰の動きに、森永は生唾を飲み込んだ。
(あぁ、ずっと追いかけていたい。追いかけて捕まえて嫌ってほど可愛がりたい)

 箱根など、すでに森永の眼中にはなかった。山口の応援は無駄なものになりそうである。




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