PSS【10 Things I Love About You 4】

第4話です。


森永くんの愛称を決めるにあたってリックが呼ぶなら何だろう、テツって日本的な気がすると思い、リク主さまに相談させていただいたんですよ。リク主さまはなんと英語圏に在住の方でして、もちろんペラペラです(確信)。
やっぱりテツかヒロ、英名っぽいものならテディ…と提案していただいて食いつきましたm9(゚д゚)っ ソ・レ・ダ!!
クマさんな森永くんにはやっぱこれでしょ♪ということで、ソッコー決まりました。そのうち磯貝さんに「テディくん」と呼ばせたいです。



【10 Things 〜 3】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
 Keさま、ハイ今回兄さん登場です♪一目惚れするシーン・・・すいません大してありません。後日別途になります←。脳の穴については、私は扉の影から見守り隊なので直接抱きたいとかまで思わないんですけど、森永くんよりうまくやって兄さんの微笑みを間近で拝みたいとは思っています╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !
Miさま、たくさんコメントありがとうございます(^ ^)10年…いや15年は前になるでしょうか?私劇場で見ましたよ、確か。かなりインパクトのある映画でした。記事回り嬉しい悲鳴上がる量ですねww目薬片手にいってらっしゃ〜い( ´ ▽ ` )ノ




 翌週農学部の手前で待ち合わせた磯貝と森永は、通行人を装い、昼のチャイムとともにゆっくりと歩き出した。ふだん巽宗一は研究の合間に食事を取るので時間の把握ができないが、2コマ目に講義がある火曜だけは決まった時間に学食へ向かう。これも磯貝が調べた情報だ。
「いたいた。森永くん、あの白いシャツ。今こっちに向かって歩いてくる丸眼鏡の奴が巽だよ」
 磯貝は早足で歩く宗一と目を合わせないが離さないようにして、森永に囁いた。しかし森永からはうんともすんとも反応がない。
「森永くん?」
 訝しんで振り向くと、森永は数歩後ろに立ち尽くしたまま、胸の前で手を組んで打ち震えていた。興奮に頬は上気し、目は爛々と輝いている。頭の上でリィンゴォンと鐘が鳴り響きそうだ。磯貝は先だってもこんな表情を見たことを思い出した。まさしく人が恋に落ちる瞬間の表情を。
「もりながく……」
 止める暇もあらばこそ。森永はもうすれ違う直前まで来ている宗一に向かって突進した。

「こんにちは」
 急に声を掛けてきた男を、宗一は頭から無視した。
「あの、こんにちはって」
 めげずに再度森永が声を掛けると、今初めて気付いたかのように顔を向けたが、一般人よりだいぶ早い歩調はそのままだ。
「なんだ、俺に言ってるのか」
「他にいないでしょ。ね、良かったら今からゴハンでもどう?」
 磯貝は宗一の視界に入らないように、斜め後ろから二人の後を追った。森永は魅力全開の笑顔でアピールしている。
「アホか、なんで俺が初対面の奴とメシを食わなきゃならんのだ」
「あぁごめんね、自己紹介がまだだった。おれ森永哲博。あなたは?」
「………」
 宗一はものすごく胡散臭いものを見る目で森永を睨み上げた。森永は臆する様子もない。
「そんな不安そうな顔しないで。押し売りでも宗教の勧誘でもないから」
「……俺は一人でメシを食う主義だ」
 宗一は相手にしないことにしたらしい。ふいっと顔を逸らしていっそう足を早めた。
「人見知りするタイプなんだ?じゃあまた明日誘うよ。同じくらいの時間にここ通る?」
「さあな」
「多少ズレても平気だよ、オレ待つの嫌いじゃないから。じゃあ明日ね」
 歩調を緩めて手を振った森永を振り返りもせず、宗一は目前に迫った食堂の階段をほとんど駆け上がるように昇っていく。森永はその背を目で追って、熱い息を零した。
「いい……」

 立ち尽くしている森永に追いつくと、磯貝は食堂から見えない位置にまで森永を引っ張っていった。森永はまだぼんやりしている。
「君すごいな。あんな塩対応に食い下がれるって」
「あ〜磯貝さん、ごめんなさい。俺好きな人出来ちゃったんで、この話はなかったことに」
「いやいや大丈夫。さっきのが巽宗一なんだ。君のターゲット」
 磯貝は実際驚いていた。ホモの好みは心底わからない。だが都合が良い、森永は真剣に取り組むだろう。
「そうなんですか?!オレあんなどストライクな人初めてだ……」
「まさに運命ってところだな」
 背を軽く叩いてやると、森永は頬に手を当てて恥じらった。小声でうわうわどーしよー、と嬉しそうに呟く。
「君の恋の成就のためには、俺らは協力を惜しまないよ」
「ありがとうございます!」
 二人は堅い、握手をした。



「巽先輩!」
 宗一の所属する応用生命科学棟の入り口で待つこと数十分、森永は棟から出てくるのではなく、外から帰ってきた宗一を捕まえた。姿を見つけた途端、走り寄って横に張りつく。
「昨日はすみません、院生さんって知らなくてタメ口きいちゃって」
「……?誰だ?」
「やだなぁ森永ですよ、昨日声掛けたでしょ」
「知らん」
「一緒にゴハン食べましょって約束したじゃないですかぁ」
「うっせーな今忙しいんだよ!」
 怒鳴りつけた宗一ははたと立ち止まり、何かを思いついたように幾度か頷いた。
「おまえヒマか?ヒマなんだな」
「え、まあ。お昼ですし」
「よし。今からちょっと手伝え」
 宗一は森永の腕を掴むと、入り口にぐいぐいと引っ張って行った。森永が「触られちゃった!」「意外と積極的?!」などと心中で叫ぶ間に、もう廊下を歩かされている。
「あの、でもオレ部外者ですけど……」
「かまわん、猫の手でも借りてーくらいなんだ」
 ガラッと大きな音を立てて開けた向こうには、誰もいなかった。所狭しと実験器具や機械が並んでいる。デスクは隅に一台だけだ。「ふたりきり〜」などと舞い上がる森永に、宗一はそのデスクの横を指し示した。
「とりあえず洗い物頼む。洗ったものはそこのカゴに入れて乾燥機な」
「あっ、はい」
 シンクの横の洗面器には、これでもかと言わんばかりにフラスコだの試験管だのが山積みになっている。宗一は持っていたレジ袋をデスクに放り出すと、早速実験台の前に立ち、サンプルの色具合を確かめ始めた。
「ん……順調だな」
 何やら作業を開始する宗一を横目に、森永は袖を捲った。思っていたのとは違うが、これはチャンスだ。うまくやって気に入られれば今後の道も拓けるかもしれない。むん、と気合いを入れると、森永は洗い物に取りかかった。

 途中休憩して昼食を取り_____レジ袋の中身は大量のカップラーメンとおにぎりだった_____午後の講義の時間だけ抜け、森永は8時過ぎまで宗一を手伝った。正直言って目が回りそうだったので、宗一が「今日はこのへんにすっか」と宣った時には思わず「ありがとうございます」と返したほどだ。すると宗一はひょいと眉を上げて、初めて見るもののように森永をじっと見た。
「変な奴だな」
「ええ〜そうですか?」
 もう少し「おまえのおかげで助かった」とか「頼りになる奴だな」とか「これからも一緒にいて欲しい」とかなんとかあると思ったのに、評価が変な奴では泣くしかない。
「腹減ったろ。晩メシ奢ってやるから来い」
「わ!ありがとうございます!」
 だが少なくとも”一緒にゴハン”は達成だ。これで今日一日の成果は出たと、森永は満足した。

 大学から一番近いファミレスは、さすがに学生が多い。一人で勉強しているようなのもいれば、既に酒が入っているのか大声で騒ぐ集団もいる。
 宗一はひときわ高く上がった笑い声に顔を顰めながら店員に喫煙席と告げた。森永に確認はしなかったが、森永はもう大体この男の性格を掴んでいたので気にしなかった。

 宗一は確かに乱暴者と言えた。口と同時に手も足もでるといった感じで、森永はほぼ初対面なのに今日三回も殴られたのである。しかし事前に聞いていたイメージとは、やや趣を異にした。理不尽に乱暴という訳ではない。いや人によってはそれを理不尽と捉えるのかもしれないが、彼の中には明確な正義や可不可があり、それに外れるものを叩き直すために鉄槌を下すというのが最も近い印象だった。
 それに彼は他人だけでなく、自分にも非常に厳しかった。決して失敗を誤魔化したり、人のせいにしたりしないのだろう。そういった総てに、森永は好意を感じた。確固たる自意識を持つ人間が好きだ。他人に流されず、そうあろうとせずともその人らしい生き方を自然に選び取る_____自分が出来ないことをやり遂げている人間を見るのは眩しく、少し妬ましい。
 注文の品が運ばれてくる。宗一はサバ味噌定食、森永はラザニアとサラダだ。宗一は箸を取ると小さな声でいただきますと呟いた。その礼儀正しさに微笑んで、森永も手を合わせた。

 食事をしながら、改めて所属を聞かれて森永は苦笑した。本当に誰でも良かったのだと思うと少々切ないものがある。
「工学部で生物機能工学やってます。だから結構分野近いですよ」
「そうだったのか。道理で手際がいいと思った」
 宗一は洗い物を始め、データの取り込みやメモ取りなど誰でもできることだけやらせようと森永を引っ張ったのだったが、森永が試薬の定量や標本作製も手慣れた様子でこなすのを見、あれもこれもとやらせて非常に作業が捗った。おかげで夕食、夜食の分まで用意した非常食は出番が来ていない。こういう助手が自分にひとりでもいればいいのに、と思った心を読んだかのように、森永が嬉しそうに言う。
「良かったらこれからも手伝いますよ!うちのゼミってかなり自由で、提出物さえ出してればいいんです。日中の空いてる時間とか、バイトない日は夜も大丈夫ですし」
「それは助かるが……バイト代は出せんぞ。いっつも奢ってやるわけにもいかんし」
 それはあまりにも宗一に都合の良い申し出と言えよう。目の前に大金が転がっていても人間飛びつけないように、宗一も自然、躊躇した。
「そんなのいいんです。オレ今日先輩見てて、初めて研究って面白そうだって思いました。ずっと大学も退屈だと思ってたけど……だから、色々教えてもらえると嬉しいです」
「ふーんそういうことなら……まあ。けど邪魔だったら叩き出すぞ」
 諸手を挙げず威嚇してみせたのはプライドなのか、このように懐かれたことなどない宗一には良くわからなかった。半日こき使われたにも関わらず上機嫌な、他意などなさそうな森永の笑顔に落ち着かない気持ちになる。
「俺、きっと役に立ちますよ」
 斯くして森永は各方面にエンゼルスマイルと大人気の笑顔でもって_____宗一の携帯番号をゲットしたのだった。



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