PSS【10 Things I Love About You 5】

第5話です。


 ここに書く小ネタがなぁんにもないことがあります。今日もありません。まあ平和だな、ってことなんですけど。毎日更新される方は本当にすごい・・・


【10 Things 〜 4】に頂いたコメントにお返事させていただいています。お心当たりの方は覗いてやってくださいね♪
 Chiさま、実験に集中していると他のことがホントおろそかなんでしょうねww森永くんを釣ったのか釣られたのかwwその日が近いかは謎ですが、間違いなくテディは肉食なんで注意!
 Keさま、たくさんコメントありがとうございます(人´v`)*゚ブログは分かりませんが聞いた話によるとpixiv的なものに沢山SSが投稿されているらしいですよ!脳の穴の話、でも男性側の体験ってぜひしてみたいとは思いますね、来世男になりたいとかではなくて。森永くんの一目惚れシーンは本編でもほとんど描かれていないので、きっとこんな風だったんじゃないかという脳内補完に近いです。恋愛ジプシーだった森永くんがようやく恋を見つけた瞬間だったと。兄さんの正義はいい人的なものではないけど、口だけじゃないのがすごいと思います。どうやらKeさんとは萌えツボが非常に近い様子ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノナカーマ!後半もビシバシ突いていきたいです♪




「早いね、巽くん」
「黒川さん来てくれたんですか!」
 巴のサークルは早速活動を開始した。毎日16時から、工学部一般教育棟1123教室が活動場所だ。
「もちろん。そのつもりで入ったんだし」
「うちの兄さんは院生がサークルなんて行ってられるかって」
「まぁ実験とかしてる人は時間の融通つけづらいかも知れないね」
 机をいくつかくっつけて、巴は方眼紙を広げている。手書きの設計図のようだ。
「磯貝もこの後来るよ。なんだか話があるからって」
「話、ですか?」
 宗一と磯貝は基本的に名前だけで参加する気はないらしい。リックと巴はまだ一般教養も多いが、黒川はバイトの時間さえ調整すれば都合はつけやすい。もちろん工学部の巴と経済学部のリックでは取る講義も違ってくるので、こうやって二人きりで過ごせる機会も多そうだ。こんな日には磯貝にも来て欲しくないが、磯貝の用はリックの来ない日が重要らしかった。
「それ設計図?ごめんね、あんまり役に立てなくて」
「そんな!独りじゃないだけで心強いです」
 可愛いことを言ってくれる。黒川の周りには強気な人物しかいないため、巴のこういう発言が黒川の胸をキュンとさせる。計算しているわけではないのが、また良かった。
「ちょっと調べはしたんだけど……6月に大きなコンテストがあるらしいね?」
「はい、最終的にはその大会が目標なんですけど、今年はもう受付も終わっちゃってますから。7月に企業主催の小さなレスキューロボコンがあって、とりあえずそれに挑戦したいんです。参加登録はしてあります」
 応募要項を見ながら、巴の構想を聞く。分からないことのほうが多いが、瞳を輝かせて話す巴を見ていると何でもしてやりたいと強く思う。こんな時間がずっと続けばいいのに_____しかしその願いは瞬く間に潰えた。

「いよっ揃ってるね!」
 わざとかと疑うような音を立てて教室に入ってきた磯貝は、男を二人連れていた。一人は森永だが、もう一人は初めて見る顔だ。巴はどちらも初対面である。
 新顔の男は白人だった。磯貝より少し背が高いくらいでがっしりしており、胸ほどまで長さのある髪と瞳は黒だが、顔立ちの彫りの深さは如何にも西洋人だ。Tシャツにハーフパンツという服装だが、このTシャツがまたすごい。橙色に白い文字で『名鉄特急 ミュースカイは120km/h』とでかでか書いてある。『120km/h』の部分は赤の枠取り付きだ。黒川は猛烈に背中の柄を見たいと思った。
「新しいメンバーを連れてきたよ〜」
 会釈して入ってくる二人と挨拶を交わし、適当な椅子に座ると磯貝はおもむろに切り出した。
「突然ですが巴くん、きみ同性愛者に偏見ってある?」
「?!」
「偏見……ですか」
 黒川にとっては爆弾のような質問だ。固唾を飲んで答えを待つ。巴は顎に指を当て、頭を右に傾け左に傾け考えている。
「ないと思います。そういう人に会ったことがないから分からないけど……」
「それは良かった」
 ほっと肩の力を抜いた黒川だが、戦々恐々と磯貝に視線を向けた。まさかいきなりぶっちゃける気じゃないだろうな、と伝わるか分からないが目で問う。
「実はこの二人がそうなんだよ」
「え、ええ〜?!」
 びく、と肩を揺らした黒川ではなく、紹介されたのは新メンバー二人だった。磯貝は黒川の反応を見てニヤニヤしている。無責任に面白がるな!と言いたいところだが、面白くないと動かない男に言ったところで無駄なのも良く知っている。
「全然そんな風に見えないですね」
 遠慮がちに二人を見上げる巴のゲイイメージは、おそらくニューハーフかなんかだろう。
「見た目でわからない人もいるってことだねぇ」
 磯貝がちらりと黒川を見るので、黒川は目を逸らした。なんと言われようと好きなのは”巴”であって、”男”ではないのだ。
「こっちのフィルくんはなんとリックの元カレだ。今回ヨリを戻したくて、遥々アメリカから追いかけて来たそうだ」
「えっ?ってゆーことはリックも……?」
 目の前で巴が目を丸くしたり赤くなったり、いちいち驚くのにもフィルは我関せずといった様子で黙っていた。いや、Tシャツの柄からして日本語は全くダメなのかもしれない。

「おい、どうやって見つけてきたんだよ。学生じゃないんだろ」
 黒川が袖を引っ張って囁くと、磯貝も小声で応じた。ふふん、と自慢げに笑う。
「アダムサイトで聞き込んできたのさ。ほら、赤っぽい髪の店員いたろ。ヒロトくんっつーんだけど話せる子でね……」
「勇気あるな……!声掛けられたりしないか?」
「ヒロトくん目当ての設定さ。話せるって言ったろ」
 ウィンクすると磯貝は巴に向き直って今度は森永を指した。森永は愛想良く微笑んでいる。
「そしてなんとこっちの森永くんはだね、巴くん、きみのお兄さんである宗一くんにゾッコンなんだよ」
「えええええ〜〜〜っ!!!」
 今度こそ巴は許容量を越えたらしい。両手で頬を挟んでブツブツと何か呟いている。
「あの巴くん……ごめんね。お兄さんがどうこうじゃないんだ、俺が勝手に好きになっただけで。偏見なくても身内の話になると別だよね」
 拒絶と感じたのだろう、森永は眉毛を下げて俯いた。
 その姿に黒川はハッとさせられる思いだった。森永のようにゲイであることを肯定していても、やはり世間の目は冷たいのだろう。明るい好青年の心の傷が見えた気がして切ない。そして自分もその道を選ぼうとしているのだ。
「あっ違うんです森永さん!そうじゃなくて……あの、うちの兄ってちょっと性格に難ありなんですけど、その辺は知っててなんですか……?」
 巴の表情に嫌悪は見られない。本当に偏見がないようだと分かって黒川は嬉しかった。男が好きだと自覚している筈の黒川のほうがよっぽど偏見を持っているほどだ。
「うん、難しい人だってことは良く知ってるよ。でもすごく優しい人だってことも、もう分かってるんだ」
 ぱあ、と巴の顔に笑みが広がる。今まで見た中で一番嬉しそうな表情だ。自分に向けられたものなら良かったのに_____黒川は僅かながらも嫉妬した。
「家族以外でそう言ってくれた人初めてです。分かってくれてるなら心配いらないや。森永さん、兄さんをよろしくお願いします」
「や、だってまだ全然片想いなのに……」
 深々と頭を下げる巴に森永は戸惑って両手を振る。心が広いと言うか気が早いと言うか。
「あ、そっか。そうですよね」
 だが巴の反応は森永を涙ぐませるに十分だった。果たして黒川の気持ちも、こんな風に穏やかに受け止めてくれるのだろうか。

「ところで兄さんとはどこで出会ったんですか?その……男の人から見てどういうところに惹かれるんです?」
 巴はもう興味津々だ。これは生来持っている好奇心なんだろう。森永はもじもじと机にのの字を書きながら語り始めた。
「俺が初めて先輩を見たのは食堂の近くだよ。……一目惚れだった」
 森永は座ったまま夢見るように両手を胸の前で組み、斜め上を見た。うっとりと目を細める。
「あの人の姿を見た途端、周りから音が消えて_____時間が止まったみたいに感じたんだ。俺のほうに向かって歩いてくる先輩の動きはスローモーションに見えたよ。ちょうど風が吹いて、キレイな長い髪と白衣を巻き上げた。白衣のポケットに両手を突っ込んでた先輩は右手を出し、風に踊る前髪を抑えて形のいい眉を少し顰めたんだ。切れ長の目が細められて……すっと通った鼻筋が真面目そうなのに薄い口唇が妙に色っぽくて……煽られた白衣が細い身体を際立たせてた。白いシャツがとても良く似合ってて、足を踏み出すたびに揺れる腰が_____きゅっと締まってて本当にかっこ良くてもうたまんない感じで」
 はぁ、と熱い吐息をこぼして森永は目を閉じた。組んだ手に頬を擦り付ける。
「なんか兄さんじゃない人のこと言ってるみたい……」
「宗一くんが色っぽ……?」
「オレ現場にいたけどね。イライラしたマッドサイエンティストが競歩してるだけにしか見えなかったけどね……」
 蓼食う虫も好き好き。恐らく三者全員の頭にこの言葉が浮かんだだろう。磯貝が引き気味の空気を盛り立てるように声を励ました。
「と言うわけで、皆で二人の恋を応援してやろうじゃないか!」
 照れる森永と、なぜか拍手をする巴とつられた黒川。フィルはやっぱり素知らぬ顔を決め込んでいた。



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