PSS【かっぱ戦隊みずたまファイブ】二周年御礼とともに

 おかげさまで、本日をもちまして当ブログ二周年を迎えました。
 毎度ご訪問下さる皆さまの支えでなんとか続いております。二年かあ・・・続けられるとは正直あんまり思っていなかったのです、当初。保って一年かなあって。でも自分のネタが無くなっても、リクエストをいただいたりコラボをさせていただいたり人様の妄想に乗っかったり、そうしているうちに書きたいことが溜まってきたり。出会いのある人生って素敵です。私は幸せです。皆さま、本当にいつもありがとうございます。

 感謝を込めまして本日は、大抵の方はご存知かと思いますが、わたくしが猛プッシュしているかっぱさまを主役に据えたSSをアップさせていただきます。

 事の起こりは9月末のオフ会でした。あ〜るさんとのデートの際、キュートなかっぱちゃんぬいぐるみを頂いたんですね。同時に各地出撃前の兄弟を並べて見せていただいて、かっぱ戦隊だみずたまファイブだと妄想が弾みましてww(その内容はこちら
 そしてあ〜るさんには盛り上がった後、冷水を浴びせるような一言を。「もちろん絵を描いてくださるんですよね( ゚∀゚)?」お祝いと称して強奪したイラストがなんと計7枚!どうぞご堪能下さい!
 そうやって割とすぐに案だけは出したんですけど、なかなか私が続き物の途中だったりして書けず、ずいぶん時間が経ってしまったことは反省しています(でも記念日に上げられたのは良かったかも)。
 御本家様ほか、関係者の方々、ご協力下さった方にもご出演頂きまして。私のところにいらして下さっている方には大抵どなたか判別できるだろうと思いますが、その描写は伝聞と妄想に基づいていることをお詫びしておきますm(_ _)m

 更に私事ですが、4月から生活が変わりまして、なかなか書くことに時間を取るのが難しくなりそうです。その前に【歌う鳥は〜】を終わらせていこうと思っていたのですが多分無理・・・キリが悪くてすみません、なるべく早いうちに。
 他にもちょっと腰を据えて書きたいのもあって、更新が遅くなりそうです。できれば広告を出さずにいきたいな・・・とかのレベルで(まだ出したことがないので敷居が高い)。一周年でいただいたリクエストもまだ達成していないうちに一年経ってしまって完全詐欺容疑ですが、きっと書きますのでリク下さった方々をはじめ、皆さまどうぞ見放さずに三年目も宜しくお願い申し上げます。


 では最後に。
 新しい兄さんと森永くんに出会えることを今年も感謝!「恋する暴君」は人生の潤いです!!
 まだ連載して下さるひなこ先生と海王社さまにお礼申し上げるとともにお願いですどうぞ!雑誌も電子化してええぇえ!俺も連載に一喜一憂ハァハァ涙したいのでございます!






かっぱ戦隊みずたまファイブ

※このお話はフィクションですが、実在の人物とそこはかとなく関係があります




 とある町の商店街。全国的に商店街では年々買い物客が減り運営が難しくなっているなかで、”高永商店街”とアーチに書かれたその通りはかつての賑わいを取り戻した数少ない例だ。
 個人店主たちが一致団結してイベントや名物メニューを企画し、チェーン店にはない特色を打ち出したことで少しずつ客足を取り戻してきた。郊外型店舗に負けないよう、駐車場の確保も市やパーキング経営者と協力して行い、今では遠方から訪れる客も多い。

 その一角に『もりながっぱ寿司』はある。以前は昔ながらのカウンター式の寿司屋だったのを息子の代で拡張して、回転寿司店としてリニューアルオープンしたものだ。似た名前の有名店のように一皿100円とはいかないが、新鮮なネタをお値打ちに提供すると評判が高い。それは先代から付き合いのある仲卸業者から良いものを安く仕入れられるからなのだが、人気の理由はそれだけではない。名物であるこうら干し握り_____商店街のブランドきゅうりを使用した青果店とのコラボメニュー_____そして看板息子たちだ。


 もりながっぱ寿司は、商店街の飲食店にしては広い。親から店を受け継いだとき、閉店したままになっていた隣店を買い入れてブチ抜きで改装したからだ。
 和モダンテイストのお洒落な店内には中央にカウンター、奥に座敷、手前にテーブルが配置され、用途に合わせて選べるのが嬉しいところだ。壁のボードや掛け軸には河童が描かれ、レジの横にも河童のぬいぐるみがちょこんと置かれて愛らしく客を迎えてくれる。
 今はランチタイムが始まったばかり、平日の店内にはまだ空席が目立つが、もう少しすると昼休みのビジネスマンや小さい子供を連れた母親のグループなどで賑わうだろう。現代風アレンジの津軽三味線が流れるなか、からら、と引き戸を開けて、またひとり客がやって来た。

「ぇいらっしゃい!」
 元気な挨拶とともに背の高いハンサムな青年が素早く駆け寄ってきた。これが商店街一のイケメンと名高い看板息子だが、その他にカウンターで寿司を握る二人と焼き物担当、更に奥で座敷席の片付けをしている店員全員が同じ顔をしている。それもそのはず、この店は森永家の五つ子、通称"エンゼルファイブ"が切り盛りしているのだ。ちなみにエンゼルの呼び名は、彼らの笑顔が天使のよう、ということと名字に引っ掛けてのことである。

かっぱ戦隊1

 しかし彼らにはもうひとつ、別の顔があった。


「こんにちは、ハルさん。今日は何にします?」
 おしぼりを手渡されたのは、襟足を刈り上げたショートヘアのスレンダーな美女だ。前下がりの艶やかな黒髪が知的な雰囲気を醸し出している。サングラスをかけたままカウンターの回転椅子に浅く腰掛け、短いスカートから覗かせる脚線美は平日の長閑さからやや浮いているものの、この辺りで彼女を知らない者はいない。通りの一番端でスナック”with S”を営むハルは商店街振興組合の会長も務める才媛だ。
「こうら干しを貰うわ」
 ちゃっ、と度入りのサングラスをずらして送られた目配せに、五つ子の四男、四哲が心得たふうに頷いた。彼女がまずこうら干し握りを注文するとき、それはエンゼルファイブに依頼があったときなのである。四哲はいつも感心するのだが、それは普通の男なら誰しも舞い上がってしまうような流し目であった。ゲイなので、惚れはしないが。むしろテクニックを伝授願いたいものである。

 もりながっぱ寿司のランチタイムは、数種類のランチセットからメニューを選択するようになっているが、いくつか単品の追加もできる。
 ハルは二種類のランチセットと単品で三人前ほどを平らげた後、会計を済ませて出て行った。席に残された封筒の忘れ物を四哲が何気ない仕草で盆の下に滑り込ませ、奥に戻る。一連の動作に気付いた客はいなかった。


 ランチタイムが終了すると、もりながっぱ寿司店は夕方まで閉店となる。店員の休憩と、ディナータイムの仕込みのための時間だ。ただ今日は、休憩にしては緊迫感のあるムードが漂っていた。
 商店街では珍しいことではないが、店の二階が彼らの住まいだった。店をいったん閉めて住居に上がり昼食を済ませ、居間で楕円形のちゃぶ台に食後の緑茶を用意した五つ子は全員がテレビを見れるように詰めて座った。端に座る五哲がハルの置いていった封筒からDVDを取り出し、デッキにセットする。

 再生マークが表示されると、真っ黒な画面のまま、音楽が流れ始めた。曲は毎回違うのだが、今日は”Anytime”、たっぷりイントロを聴き終わったところでボリュームが下がり、画面が切り替わる。
『こんにちは、エンゼルファイブ。Rです』
 映し出されたのはニュースキャスターのようにカメラ正面のデスクについた女性である。焦茶の髪を丸みのあるショートヘアにまとめ、太縁の眼鏡が整った顔立ちとピシリと着こなされたパンツスーツの印象を和らげている。ビジネスライクな出で立ちでありながら優しげに微笑むこの女性はコードネーム”R”。彼らのスポンサーである”S”のメッセンジャーである。
『数日前から近隣できゅうりが奪われる事件が発生しています。それによりきゅうりの価格が急激に上昇、多方面に影響が出ています。犯人を探し出し、返還に応じるよう説得して下さい』
 Rが半身を捻って背後に目線を向けると、そこに数面、映像が映し出された。
『現在把握できている情報から犯人は男性、長髪で、白いコートもしくは白衣らしきものを着用している模様。なんらかの危険性を有する薬物を所持している可能性があります』
 映像は防犯カメラのものらしく解像度は低い。犯人と思しき男が、五つ子も付き合いのある青果店のオヤジに迫っているところだ。顔のあたりを大写しにしたキャプチャもあるが、ぼやけて造作はわからない。そのうち男が何かを上着から取り出し、店主に突きつけるのが見えた。拡大写真を見ると、緑色の液体が入った細長い瓶のようである。

かっぱ戦隊2

『こちらは昨夕18時頃の映像です。青果店店主は無事でしたが意識の低下及び記憶の混乱が見られ、詳しい事情は確認できていません。では検討を祈ります』

 プツッと画像が途切れると、仕入れを担当する二哲が悔しげに拳を握りしめた。苦々しく画面を睨む。
「どおりで!値段がいつもの5倍もして、しかも数が全然なかったんだ。みんな困ってて……ちくしょう!あいつの仕業だな?!」
「こうら干しを目当てに来てくださるお客さまに申し訳が立たない。ちょうど明日は定休日だ。今は仕込みに専念して、夜に作戦会議をしよう」
 一哲がリーダーらしく腕を組んで兄弟を見渡す。皆がそれぞれに頷いた。
「そうするとメンテに出してる変身ウォッチが必要だね。オレ今のうちに取ってくるよ」
 素早く立ち上がったのは三哲だ。兄弟中でいちばんのメカ好きなため、設備関係はほとんど彼に任されている。頼んだよ、と声をかけた一哲の声を合図に、みな持ち場へ向かうため立ち上がった。


 店を出た三哲は商店街の裏手に向かった。裏通りは住宅がほとんどだが、玩具店”森の迷路”の真後ろにあるのは工場だった。出入り口に”KOYO KOBO”と看板が掲げられている。
「あらぁいらっしゃい」
「うさぎさん、こんにちは」
「社長なら奥にいるからね〜」
 パソコンデスクに向かったまま三哲を迎えた小柄な可愛らしい女性は工房のデザイナーだ。栗色のボブを傾けておっとり話すのに反して、キーボードとマウスを扱う手捌きは人間離れしたスピードである。うさぎは玩具店の店員も掛け持ちしているが、その仕事の早さは実は数人いるのではないかと噂されるほどで、三哲は彼女を見るたび百人力という言葉を実感する。何を隠そう、もりながっぱ寿司店のこうら干し握りのデザインも彼女の手によるものである。

 軽く会釈をして奥に向かうと、ガラスで仕切られた応接室から紅葉が手招きをした。先に電話で連絡しておいたので、用意をしてくれているようだ。
「三哲くん、できてるよ」
「ありがとうございます。調子悪いところ無かったですか?」
 ”森の迷路”では玩具を販売するだけでなく、修理やオリジナル製作も取り扱っている。こんな商店街でなぜ、と思うほど紅葉の腕は確かで、オモチャには収まらない卓越した技術力とアイディアを誇る、知る人ぞ知る職人なのだった。

「故障なんかは無かったけど、幾つか部品を交換して調整してあるわ。動きのキレが多少良くなってるはずよ」
 セミロングの黒髪を簡単にまとめた紅葉は普段つなぎ姿で化粧っ気もないが、そのせいもあってか何かの折で着飾ったときのギャップが甚だしい。以前イベントで着物を着たときには、きりりとした猫目と白い肌が和装に驚くほど映え、その日のうちに商店街内でファンクラブができたのを三哲は知っている。

 三哲は差し出された箱の中から自分のイメージカラーの水色を選び出すと、左手首に装着して目の高さに掲げて見た。汚れや傷も修復され、新品さながらだ。
「さすがですね。短い期間でありがとうございます」
 感謝を込めて微笑むと、紅葉は腕を組んで顎をあげる。
「そおねー、今回の装着する有機素子のね、蒸着方法を変更したら素粒子の被体速度が9%向上したもんだから今までよりも変身BGMにタイミング良く合わせられるようになったのよねだからBGMは楽器屋のぴーちゃんに協力してもらってギター音源を録り直してるんだけどこれがとにかくカッコイイって言うか聞いてるだけで魂が燃えるって言うかすごいのよほほほほおい!!」

 落ち着いた口調で話していた紅葉だが、次第に興奮して早口かつ声が大きくなる。拳を握り締めて歌うように叫んだところではっと我に返り、紅葉はてへ、と舌を出して頭を掻いた。
「ごめんね、ついコーフンしちゃって」
「いえいえ」
 三哲は苦笑してみせたが、この間欠泉的なテンションの上がりかたも紅葉の魅力のひとつだと実は思っていたりする。ゲイなので、惚れはしないが。




 翌日。エンゼルファイブは早朝から聞き込みを開始した。青果店、市場、農協から農家へと流通ルートを追って犯人の足取りを辿る。犯人は特に隠れるつもりはなかったらしく行く先々で目撃されていたが、犯行手口は不可解なものだった。

「すまねぇ、哲っちゃん達。なんかあの人に迫られたら頭がくらくらしちまって……。いっぱい欲しい、ぜんぶ欲しい、なんて言われてあるだけ差し出しちまったんだよ」
 青果店店主は意識ははっきりしていたが、例の男とのやり取りについては詳細を話すことができなかった。話しているうちに頭がぼうっとして、何も考えられなくなったと言う。
「まるで魔法にかけられたみたいにさ。かぁちゃんにも散々怒られたけど、思い出そうとするとまた身体が火照っちまうんだ……」
 オヤジはハフ、と熱い息を吐く。オヤジが頬を染める様子など見たくもないが、要するに催眠術のようなものを用いて言うことを聞かせているのだと思われた。
 他でも証言はほぼ同じだった。犯人は相手が男だろうと女だろうと不思議な術で籠絡し、きゅうりを無償で手に入れている。どうやら防犯カメラの映像で見た緑色の液体が神経ガスを発生させるようだ。
 このままでは危険だ。今はまだ農作物で済んでいるが、いずれきゅうりハウスごと奪われる事態になりかねない。五つ子はふんどしを締め直し、農家に残されていた宅配便の送り先から判明した犯人のアジトへ向かった。


 アジトは商店街から1kmほど離れた閑静な住宅街に佇む、小綺麗な一軒家だった。伊達めがねで通行人を装い監視すること一時間、五つ子は近付いてくる人影を捉えた。それはダンボールを山積みにした台車を押した男性で、白衣を着用し普通の眼鏡の上に実験用のゴーグルを着け、怪しいことこの上ない。顔の判別は出来ないものの、身長や体格からも映像で見た犯人とほぼ一致する。
 それに極めつけが運んでいる荷物である。ダンボールにはおなじみ”高永きゅうり”のブランドロゴ、更に男が腕に掛けているポリ袋にもきゅうりがどっさり入っていた。

「おい、貴様!」
 一哲が飛び出して立ち塞がると、男は立ち止まり、不審感を露わに身構えた。
「ああ?誰だおまえ」
「きゅうりを非合法な手段でかき集めているだろうッ!皆が迷惑している。今すぐ農協に返すんだッ!」
 誰何にも取り合わず一哲が指を突きつける。次々と現れて居並ぶ五つ子に、男は後退りした。
「俺は別に変なことはしてねーぞ。ちゃんと買うって言ってんのに、みんな持ってけっつーから」
「それは貴様が怪しい薬で操っているからだろうッ!」
「はぁ?なんの話だ操るとかって……」
 男はまったく分からない、と言うように首を傾げる。だが積まれたきゅうり箱が確かな証拠だ。一個人が必要とする量ではない。きっと男は悪の組織の手先に違いなく、集めたきゅうりは悪事に使われるに決まっている。

「では何のためにきゅうりを集めている?目的を言え!」
 二哲の問いに男はニヤリと口の端を上げた。ふふふふふと低音の笑い声が漏れる。
「よくぞ聞いてくれた」
 バサァッと白衣が翻り、内側の物入れが五つ子の前に見せつけられた。薄緑色の液体で満たされた試験管が三本、細い筒状のポケットに納められている。
 しかし五つ子の目が引き寄せられたのは、試験管ではなく男の腰だった。白衣とともにシャツがめくれ上がり、細身のローライズジーンズからちらりと覗く腰骨とへそ、肌の白さが五つ子のハートとアソコをずきゅん♡と撃ち抜く。

「俺は今、肥満特効薬の研究をしているんだが、きゅうりに含まれる酵素に有用な成分が見つかってな。実験のために多量のきゅうりが必要なんだよ」
「え……肥満特効薬?」
 ぷるぷると頭を振り、一番早く我に帰った四哲が聞き返す。白衣を脱いだ男はスラリとした体躯で、肥満と結びつくイメージがまったくない。
「俺が特効薬を研究しているのにはワケがある。俺の弟が今アメリカにいるんだがな。なんと……」
 ここで男は言葉を切るとくっ、と悔しげに歯軋りをした。怒りに拳を握り締め、吐き捨てる。
「誑かされて男と結婚しちまったんだ!くそう、黒川のホモめが!」
 五つ子はうっ、と怯んで揃って胸を押さえた。全員ホモだったからである。その様子に気付くことはなく、男は続けた。
「アメリカはこれが喉から手が出るほど欲しいだろう、肥満が社会問題になってる国だからな。引き換えに同性婚を廃止させるんだ。すでに結婚している奴らは強制離婚だッ!」
 くっくっくっ、と不敵な笑いを浮かべ、男は手にした試験管を誇らしげに掲げた。薄緑の液体が燦然と輝く。青果店の店主に突きつけていたのは、意外や意外、研究中の肥満特効薬だったのだ。
「させるか!」
 時計をはめた左手首を顔の前に掲げ、一哲が叫ぶ。兄弟も次々と構えた。
「俺だって……いつかいい人が出来たらアメリカで結婚するのが夢なんだ!」
「恋人募集中!」
「あっ、どさくさに紛れて!」
「行くぞみんな!」
「「「「「ヘン、シーン!!!」」」」」

 ピカッと閃光が走り、白衣の男は思わず目を腕で覆った。何かが高速で空を斬る音が走り、ひと昔前のアニメ音楽のようなものが大音量で響き渡る。それはリズミカルにビートを刻み、明滅する光と流れるようなエレキギターの音色とともに一気に最高潮まで盛り上がった。何が起こっているものやら、見たいような見たくないような複雑な気分だ。最後の音の余韻が途切れたあたりでそろそろと目を開けると、男の前には見たこともないような光景が広がっていた。

「「「「「我らみずたまファイブ!商店街の平和を乱す奴は許さない。覚悟しろ!」」」」」

かっぱ戦隊3

 鍛え抜かれた緑色の肉体が陽の光を眩しく跳ね返す。つややかに丸みを帯び、そのくせ攻撃的な先端を持つクチバシはまるで戦闘機のよう。ひときわ異彩を放つのは頭頂部に煌めく銀盤で、その妖しくも魅惑的なさまは周囲を取り囲む烏の濡羽のような頭髪と相まって、夜空を支配する望月にも、闇に沈む静謐な湖にも見えた。

「河…童……?」
 そう、河童だった。それぞれ赤、紺、水色、桃色、黒と色を分けた水玉模様のフンドシを見せつけるように背を反らし、腰に両手を当ててポーズを取るエンゼルファイブ、いや、みずたまファイブは、フンドシに挟み込んだ立派なきゅうりに手を当て、高らかに叫んだ。

「「「「「が っ た い !!」」」」」

かっぱ戦隊4

さらに合体技「ヤマカタグルマ」を発動するとリーダーの褌がQエネルギーをチャージし、葉っぱへと進化するのである!

かっぱ戦隊5

「何やってんだお前らそれ……」
 茫然と男はゴーグルを外した。初めて遭遇するヒーロー戦隊の姿に感銘を受けたのかもしれない。その瞬間、みずたまファイブの動きが止まった。不恰好なプラスチックレンズの下から現れた素顔に視線が釘付けになったのだ。男は_____まだ若い青年で_____五つ子の好みどストライクなあっさり美形だった。

かっぱ戦隊6

「な……なんというフェロモンだ……!」
「美しい……」
「いやカッコイイ!」
「それに加えてあの腰だと……?」
「なんてけしから、いや素敵な人なんだ!」

 ヤマカタグルマからごくりと唾を飲み込む音が次々と聞こえる。葉っぱを筆頭に、水玉のフンドシがふらふらと不穏な動きを見せた。
「な、なんだよ……」
 本能的に危険を感じ取ったのか、青年が数歩後退った。その腰の動きもまたなまめかしい。みずたまファイブは確信した。きゅうりを差し出した農家や店主は催眠術をかけられたのではない。ただ、青年の魅力に参ってしまっただけだったのだ。今の彼らのように。


『動かないで!!』
 突然、空から声が降ってきた。プロペラ音が響き、上空から強い風が吹きつける。飛ばされないように腰を落として地を踏みしめ、見上げた彼らの頭上でヘリがホバリングしている。拡声器を通した声はハルのものだ。
『リーダー!指令の変更よ!受け取って!』
 ヘリのドアが開かれ、煽られた髪を押さえながら、ハルが何かを放り投げた。それは地上10m付近まで落下すると、小さなパラシュートを広げて降りてくる。リーダーがうまくキャッチするのを見届けると、ハルはグッと親指を立て、爆音とともに去っていった。

 ヤマカタグルマを解いたみずたまファイブが集まる。落とされたのは小さなホログラムボックスだった。スイッチを入れると、今日は”I'll never love again”のイントロから始まり、やがてお馴染みのRの姿が映し出された。
『エンゼルファイブ、犯人のアジトを突き止めた働き、見事でした。彼は巽 宗一。きゅうりは研究のために必要だったようですね。目的が明らかになったいま、彼の研究を妨げることはSの本意ではありません。そこで指令を変更します。Sは巽研究員の勤める研究所に資金と人員の提供を申し出、快諾を受けました。研究所から自宅まで巽研究員をサポートし、肥満特効薬の実現に努めるように。Sが入手を強く望んでいます』

「「「「「合点承知!!」」」」」

 五つ子は鼻息荒くガッツポーズを取ると、ぽかんと口を開けている青年_____宗一を取り囲んだ。我先に気に入られようと互いを押し退けあい、宗一の正面に立とうと争う。

「さっ宗一さん、お荷物お持ちしますよ」
「おなか空いていませんか?何か握りましょうか」
「俺は掃除も得意ですよ!ベッドルームからしましょうか、それともバスルーム?」
「洗濯は俺に任せて!下着にアイロンはかける派ですか?」
「お肌のお手入れやマッサージはいかがですか?肩凝りに効くツボが腰骨の下にゲヘゲヘ」

 五つ子はまだ変身を解いてはおらず、当然褌一丁だった。緑色の胸板に囲まれ宗一はたじろいで逃げ場を探したが、かっぱたちの胴よりも横幅のある甲羅に阻まれて抜け出せない。
「良かったら俺のきゅうりも使って下さい。いい仕事しますよっ」
 ぽっと頬を赤らめて、五哲が言う。もじもじと、しかし誇らしげに腰を突き出す。確かに立派なきゅうりだ。深い緑色の皮はパリッと瑞々しく、棘は新鮮さそのものに尖っている。
「俺のも!」
「いや俺のほうが!」
 我も我もときゅうりが突き出され、必死にアピールする五つ子はハァハァと息が荒い。堪忍袋の緒が切れる寸前で拳を固めた宗一は、いつの間にかフンドシから覗くきゅうりの本数が増えていることに気付き、青ざめた。
「うるさい変態どもあっちへ行けーーーっ!!」


 宗一の叫びにも関わらず、エンゼルファイブは押しかけ女房的に活躍して宗一の生活を快適にした。肥満特効薬が完成したかどうかは謎だが、その後ずっと、もりながっぱ寿司は閉店したままだったとさ。ちゃんちゃん。

かっぱ戦隊7



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Special Thanks: R様、C様、M様、U様、P様
ご協力ありがとうございました!!
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